第9話 ユイ(30代)第1回09

文字数 1,635文字

はーい。ありがとうございまーす。


(しばし沈黙)

ありがとうございまーす。では、仰向けでお願いしまーす。
はい。


――ぼくは仰向けになった。


失礼しまーす。ほいなっ。失礼しまーす。
…。
○○○○は○○ますか?
いや、あんまり○○ないです。
あんまり? いやじゃないですか?
いやじゃないです。
いやじゃない。はーい。きゅっ。
…。
まったく? あんまり?
まったくですね。
きゅっ。まったく?
そうですね。まったくですね。
ガーン…。アハハッ まったくかあ…。
まったくですね。
うーん…。ちょっと枕あげまーす。
はい。
おおきに。
さすがかなり細身ですね。
うれしいー。
細いタイプのひとが好きなんですよね。
なるほど。細い子が好き?
そうですね。そうとう細いですね。
うれしいー。痛ない?
うん。痛くないです。
よかったー。


(しばし沈黙)


近くから見てもかわいいですね。
おおきに。めっちゃほめてくれるやん。
つい思ってしまったことを言ってるだけですので。
うれしいー。
…。
…。
ありがとうございます。単純にうれしいです。
アハハッ


(しばし沈黙)


はーい。はいなあ。
けどなんでまた、ラウンドガールとかイベントコンパニオンとかを辞めてマッサージのほうに行ったんですか?
やっぱ手に職つけようと思って。
ああ。
で、やっぱ美容に興味があったので、アロマの勉強。
ああ、なるほどね。
で、アロマセラピストっていう資格を取り、って感じですね。
やっぱ最初は学ぶことが多いっていうか、勉強しなきゃいけないことが…。
勉強は大変でした! 資格を取るのにフランスの歴史とかを学ばなければいけなくて、あと脳の仕組みとかも覚えなきゃいけなくて。テストに出てくるんで。
ああ、そうなんだ。
匂いはどこで感じるとか、そういう海馬なんちゃらかんちゃらみたいな。アハハッ 大変でした。
へえ、すごいな。そんなことまで覚えなきゃいけないんだ。
そうなんですよねー、はい。匂いって一番記憶に残るらしいんですね。
ああ、原始的なところってこと?
そうですね。一番脳に早く届くから、匂いで昔のひとのことを思い出したりとか。
ああ。
昔からお線香の匂いとか嗅ぐとおばあちゃんを思い出しますね。アハハッ
お墓参りとか行ったりするんですか?
今ね、○○に2年以上帰ってないんですよ。
なるほど。コロナで?
それもあるんですけどー、もう実家がないんですよね。
ああ、なるほどね。
家族が別のところに住んでるので。○○は○○なんですけど。だから知らない家なんですよー。
そっか。じゃあ、○○にお墓参りに帰っても、どこかホテルに泊まらないといけないってこと?
そうですね。あたしの部屋はもちろんないしー。はい、だから仕事が入れば大晦日も元旦もやろうと思ってます。
ああ、そうなんだ。ぼくはちょっと…。
にゃ?
今週末から10日間ぐらい、○○にずっといるんですよ。
あ、土日から。
そうそうそう。いやー、こっちにいればユイさんに来ていただきたいくらいですけどね。
また来年やな。さっき店長に聞いたら、2日からここ営業するみたいなので。
そうなんだ。じゃあ、来年の楽しみができましたよ。
やったー。アハハッ
もしかしたら、あっという間に予約を取られて、悲しい思いをするかもしれないですけど。
いやいやいや、どうなんでしょう? でも今、Twitterがんばってます。
ああ、お店のTwitter?
はい、ぜひ見てみてください。Twitterで売り出していくしかないらしいです。
まあ、今はTwitterが強いよね。
Twitterやってますか?
うん、やってる。このお店もフォローしてるし。
あ、そうなんや。
そうそう。
じゃあ、お店のひとがあたしのツイートをリツイートしてくれてるから、ひょっこり出てくるかもしれないですね。
そっか、そっか。そしたらもしかしたら見てたかもしれないね。
アハハッ 見ないとすぐにたまっちゃいますよね? ツイート。
そうだね。
たいへーん。
そうなんだよね。もともとここのお店を効率よく見ようと思って、Twitterのアカウント作って…。
なるほど。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色