第3話 ユイ(30代)第1回03

文字数 1,620文字

なんかお店のユイさんのページを見ると、すごくほめまくってて、「癒されない男性はいない」って書いてあったんですよね。
アハハッ あまりハードル上げないでほしい! アハハッ
いやもうすごいなって思って。ここまで持ち上げる文章って見たことがなくて。これは完璧なひとが来るなって思って。
やばい! ハードルが上がってる! アハハッ
だけど、よかったです。なんか明るい感じのいいひとで。
えーうれしいー。
なんかたまに、こう、すごくしゃべらないっていうか、すごく暗い子がいるんで。
ああ、いろんな子がいますよね、ほんと。
そうなんですよ。まあ、お店の紹介文で「めっちゃ癒されます」とか、「すごくフレンドリーです」とか書いてあったから、期待して来ていただいたら、なにを話しても「はい」とか「そうですね」とか、それで終わるっていう…。
えー、超やだー。アハハッ
すごく心折れたことがあるんですよ。
えーそれいやですねー。
うん、そうなんですよ。こっちは、一応ホームページにはフレンドリーって書いてあったから、ちょっとしゃべってくれるかなって思うじゃないですか、さすがに。
うん。
なのに、つねに「はい」とか「そうですね」で終わりなので。
えー、ふつう逆ですよね?
そうですよね!
たまにあまりしゃべらないお客さんとかいますけどね。逆ならわかるのに。
そうなんですよ。そういうひともいたので、こわいんですよ。
アハハッ こわい! アハハッ
いや、傷つくじゃないですか。そういうことがなにも書いてなければ、「おとなしい女性です」とか、「もの静かな」とか書いておいてくれれば、まだ「ああ、なるほど。こういうことね」ってなるんだけど、なんか癒してくれるしフレンドリーって書いてあるのに「どこが?」ってなったんだよね。
アハハッ 逆萌え? アハハッ
いやもう傷つく以外なかったね。萌えれなかったです。
萌えれなかったですか? アハハッ
萌えれなかったですね、さすがに。さすがにその逆は無理でしたね。
まあねえ、女の子ってほんと、その日の気分でぜんぜん違いますからね。
なるほど。そういうことね。たしかに夜中の3時ぐらいだったんですよ、来ていただいた時間。
はい。でも今なら「ちゃんとプロ意識を持ってやれ」って言うと思うんですけど、20代のころとかやっぱりあたしもどうしても無理なときはありましたね。
そうですよね。それはやっぱ若さゆえですよね。
自分でコントロールできなかったんですね。
そういうことですよね。そうなんですよ。ぼくもたぶん若い女の子はきっとそういうところがあるだろうと…。
素敵…。
ちょっとそう思ってたので、その来ていただいたかたは実は30代のかたなんですよ。
なんとまあ…。アハハッ
30代のかたでフレンドリーって書いてあったので、これはまず間違いないだろうと思って呼んだところ、そういう感じだったので。
もう説教しましょう!
ええ。していただきたいくらいですよ。
アハハッ やさしいですね!
いや、そこで素っ気ない反応されたから「おまえ、もっとフレンドリーにしろよ」って言っても、してくれるわけないですよね。
アハハッ ほら言わなくても、もうなんかシーンとしてるなら、言ってさらにシーンとさせて気分を少しは晴らしたら?
そうなんですよね。こっちも最初は気を遣ってましたけども、「もうこの子は無理だな」って思って黙りました、ぼくも。
いやー大変でしたね。
そうですね。あれ以来、お店の紹介文を疑うクセがつきましたね。
アハハッ このお店ですか、それは?
いや、ここじゃないけどね。
ああ、よかった!
まあ、そういった意味ではユイさんの紹介文は、かなりすごかったので、なるべく期待しないように期待しないように努力しましたね。
アハハッ 過去の経験から? アハハッ
期待したら負けだと思って。
アハハッ
けど、明るい感じのいいかたに来ていただけたので、よかったです。
よかったー、そう言っていただけて。にゃん。
うれしいですね!
アハハッ にゃんにゃん。
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