文字数 556文字

 審判の「はじめ!」の声を聞くと、ガチャコが体育館中にひびきわたる「オリャー、オリャオリャー」と気合の入ったでかい声をあげる。

 相手の男の子は、その声に圧倒されたように、わずかにひるんだ。

 その様子を見たガチャコが、勢いよく面に飛び込んだ。

「メンあり!」

 みごとにガチャコの飛び込み面が決まった。

 二人は中央にもどって、中段にかまえる。

「はじめ!」

 審判の声と同時に、またガチャコが「オリャオリャー、キエー、オリャー」と叫ぶ。

 ガチャコはまず対戦相手に気合で負けないよう、腹の底から声を出す。弱気になる心をそうやってふるいたたせているのだ。こういうガチャコのスタイルをじいちゃんがほめて、オレにもみならえという。そんなこといわれてもオレはビッタレだから、ガチャこのようにはやれない。

 リュウ君は無駄に声を張りあげない。そんなリュウ君の剣道のスタイルに、オレはあこがれているのだが、リュウ君はオレと違ってドキョウがあるから、そんなに気合を入れなくても勝てるのだ。オレがリュウ君と同じようにやっていたら、相手や会場の雰囲気にのまれてしまい、それで試合に負けてしまうだろう。

 相手の男の子は、最初はガチャコが女の子だと少し油断したようで、気を引きしめなおした顔で、「ドリャー」とガチャコに負けないように声をはりあげた。

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