好きな人の条件

文字数 1,070文字

 「好きなタイプってどんな人?」
若い頃、この手の質問の答えにいつも悩んだ。
好きになった人がタイプ。それに尽きるのだが、ではどんな人が好きなのか自分でもわかっていなかった。

相手の見た目において、周りから「あの人がかっこいいの?」と言われることが度々あったのは事実だ。今はこんな言葉は使わないが、その当時「ブス専」と名高かった。わたしはかっこいいと思っているのに!
でも、みんなの意見も今なら頷ける。

 その当時のわたしのかっこいい基準は、
・目が細く、こっちを見ているのかわからない人
・人間らしさを超える非力そうな細い人
・全く自分自身の見てくれに気を遣ってない、もしくはダサい人
・わたしに興味が無さそうな人
 こんなタイプの人ばかりを好きになっていた。うまくいきそうも無い条件ばかりが揃っているが、たまに成就し付き合うこともあった。
わたしの見た目は田舎では目立つタイプだった為、勝手に見られて勝手に想像されて近付かれるのが嫌だったのもこの条件を作った原因かとも思う。

 大人になり、たまたま結婚した人はみんなからかっこいいと言われる人だった。日本人の基準において、そうなんだろう。背が高く、顔が整っていて優しそう。
ただ、わたしがこの人と付き合ったのは上記の条件が魅力だった訳では無い。言っても元祖ブス専だ。いくらでもその片鱗は残っている。
では、何がよかったか。その頃にはひとつ、自信を持って言える条件があった。
 それは「かっこつけない人」。
恋をしたら、相手にいいところを見せたいのが当たり前だと言うのは百も承知だ。だが、いいところと言う基準も人それぞれだろう。わたしには、非日常の演出や歯の浮くような台詞をいいところと思う機能は備わってない。
いつも心がニュートラルで、誰の前でも変わらない人。それが、わたしにとっての彼のいいところだった。やはり見た目だけでは判断できない。

 こんなことを書いていると夢も何もない人間だと思われるだろうが、わたしは意外と昔のトレンディードラマが好きだ。現実にはあり得ない位までいくと、それはそれで楽しめる。
そしてそのドラマにおいて好きなキャラクターは「顔以外、全部ダメ」これに尽きる。
優しいけど不器用でダサい、スーパーヒーローのようにかっこつけられない、いざと言う時に決められない。そして何より、顔がいいのにその価値に本人も周りも気が付いていない(これは本当に俳優さんだからストーリーになってるだけだけど)。ダメなことが愛おしいような、そんなキャラクターに魅力を感じてしまう。

 好きな人の条件なんて、本当に当てにならない。
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