34話 夜の安らぎは、嵐の前の静けさで
文字数 1,343文字
アタシたちはアンナロイドに案内され、商業ビルに囲まれた通路を移動していた。
この事態を引き起こしたお嬢様アイドルは、アタシの左腕を右腕で完全にロックし満面の笑みを浮かべている。
それは別にいい。さっきまでも似たようなものだった。
だが何故小夜 は、左腕で亀ちゃんの右腕をロックしているのだろうか?
しかもしきりに話しかけている。
「ではでは、亀ちゃんも私の後輩なのですね♪ 先輩と呼ぶ権利をあげましょう♪」
「ありがとうございます。歌柳院 先輩」
「チッチッチ。歌柳院先輩はないな。小夜先輩と呼びたまえ♪」
「は、はい。小夜先輩」
小夜は閉ざされた瞼をピクピクと震わせながら、アタシを見てくる。
「聞いた、翼 ちゃん! 素直だよ。この子! 翼ちゃんと違って、無茶苦茶素直だよ!」
大きなお世話である。
「おまけに私と同じで翼ちゃんのファンだし!」
「ファ、ファンですか? ……そう……ですね。確かに飛鳥 さんには憧れているかもしれません」
「間違いないよ! 私、声聞いたらわかるもん」
は、はあ⁉
いや、小夜の声と耳を疑う気はないけれど、アタシに憧れてるってなに?
アタシはどんな顔をしていいかわからず、とりあえず仏頂面をつくる。
「亀戸 様もメイドをなされたいのですか?」
フゥ。なんとかキャラを壊さずにすんだ。
「ち、違いますよ! なんというかその~、飛鳥さんは言動に有無を言わせない力強さがあります。日ノ本さんもスゴいパワーを感じる人ですけど、日ノ本さんは皆のことを考え、皆を土台から支える様な暖かな力強さをかんじます。皆を導いてくれる感じでしょうか。でも飛鳥さんの強さはそれとは違って、背中で語るというか、孤高の極みにいるというか、思わず震えがくるような力強さを感じます」
「あは♪ 私ニュアンスわかる~♪ 琥珀ちゃんの声は一度聞いたことがあるけど、彼女は『みんなで共に頑張ろう』タイプで、飛鳥ちゃんは『黙って俺についてこい』タイプだよね~」
いや、逆だよね! アタシそんな唯我独尊みたいな生き方してないし!
「そうです、そうです! そんな感じです! 僕も飛鳥さんのように、もっと自分をだせるようになれたらなって。そしていつか、自分も隣に立てるぐらい強くなりたい」
いやいや! 亀ちゃん自分だしまくりだから!
テロリスト来てから一番生き生きしてるの亀ちゃんだからね!
「大丈夫。亀ちゃんならきっと強くなれるよ」
小夜が両腕に力を込め、アタシと亀ちゃんをそれぞれ引き寄せる。
まぁ、なんにしても二人は仲良くなれそうで結構なことだ。
それよりも、二人から向けられてくる『私、ファンです』光線がなんとも気恥ずかしい。
これまで蔑むような視線しか浴びてこなかったから、しょうがないと言えばしょうがないのだけれど。
クッ。トップアイドルを目指そうという者がこれではダメだ。
むしろこういった感情を向けられることを、快感に感じるようにならなければ!
あ、あれ? アタシの目指しているのって変態だっけ?
「お前ら、そろそろ気持ち切り替えてけよ。どうやらアレが、臨時作戦室とやらみたいだぜ」
呆れたような師匠の声と同時に、アタシの顔の横からにょきっと出てきた腕が、通路のド真ん中に堂々と仮設されている大型のテントを指さしていた。
この事態を引き起こしたお嬢様アイドルは、アタシの左腕を右腕で完全にロックし満面の笑みを浮かべている。
それは別にいい。さっきまでも似たようなものだった。
だが何故
しかもしきりに話しかけている。
「ではでは、亀ちゃんも私の後輩なのですね♪ 先輩と呼ぶ権利をあげましょう♪」
「ありがとうございます。
「チッチッチ。歌柳院先輩はないな。小夜先輩と呼びたまえ♪」
「は、はい。小夜先輩」
小夜は閉ざされた瞼をピクピクと震わせながら、アタシを見てくる。
「聞いた、
大きなお世話である。
「おまけに私と同じで翼ちゃんのファンだし!」
「ファ、ファンですか? ……そう……ですね。確かに
「間違いないよ! 私、声聞いたらわかるもん」
は、はあ⁉
いや、小夜の声と耳を疑う気はないけれど、アタシに憧れてるってなに?
アタシはどんな顔をしていいかわからず、とりあえず仏頂面をつくる。
「
フゥ。なんとかキャラを壊さずにすんだ。
「ち、違いますよ! なんというかその~、飛鳥さんは言動に有無を言わせない力強さがあります。日ノ本さんもスゴいパワーを感じる人ですけど、日ノ本さんは皆のことを考え、皆を土台から支える様な暖かな力強さをかんじます。皆を導いてくれる感じでしょうか。でも飛鳥さんの強さはそれとは違って、背中で語るというか、孤高の極みにいるというか、思わず震えがくるような力強さを感じます」
「あは♪ 私ニュアンスわかる~♪ 琥珀ちゃんの声は一度聞いたことがあるけど、彼女は『みんなで共に頑張ろう』タイプで、飛鳥ちゃんは『黙って俺についてこい』タイプだよね~」
いや、逆だよね! アタシそんな唯我独尊みたいな生き方してないし!
「そうです、そうです! そんな感じです! 僕も飛鳥さんのように、もっと自分をだせるようになれたらなって。そしていつか、自分も隣に立てるぐらい強くなりたい」
いやいや! 亀ちゃん自分だしまくりだから!
テロリスト来てから一番生き生きしてるの亀ちゃんだからね!
「大丈夫。亀ちゃんならきっと強くなれるよ」
小夜が両腕に力を込め、アタシと亀ちゃんをそれぞれ引き寄せる。
まぁ、なんにしても二人は仲良くなれそうで結構なことだ。
それよりも、二人から向けられてくる『私、ファンです』光線がなんとも気恥ずかしい。
これまで蔑むような視線しか浴びてこなかったから、しょうがないと言えばしょうがないのだけれど。
クッ。トップアイドルを目指そうという者がこれではダメだ。
むしろこういった感情を向けられることを、快感に感じるようにならなければ!
あ、あれ? アタシの目指しているのって変態だっけ?
「お前ら、そろそろ気持ち切り替えてけよ。どうやらアレが、臨時作戦室とやらみたいだぜ」
呆れたような師匠の声と同時に、アタシの顔の横からにょきっと出てきた腕が、通路のド真ん中に堂々と仮設されている大型のテントを指さしていた。