その一の補足 その一

文字数 4,237文字

ニホニホ、さてさて、その二に移りたいところですが、その前に前回の補足をしようかと思ひます。
はあ。それにしても、前回から随分と間が空いてしまひましたね。
はっはっ、正月気分が長すぎたね。そもそも、こんな話、年末年始の気まぐれの内に終はらしておきたかつたんだけどな。平時はどうにも気が進みませんは。
といふか前回何話したかもよく憶えてないんやないの?多分。
ええーと、あなたが長らく学習してゐる言語があつて、その言語でお喋りする場所に通ひ詰めてたけれど、色々あつて離れてしまつた、て感じでしたつけ。
あ、意外と真面目に答へてくれた。ありがと。おれもよく憶えてないけど、まあ多分そんな感じです。では、ちなみに、その言語の名前は何でせうか?
ええーと……ロジ、パン。
おおーぅ、一字違ひ。とても惜しいけどありがちな間違ひ方しますね。つい何か食べたくなる名前に思はれるのかもだけど、「パン」ではないんです。となると、もうわかりますよね?
はあ。パンではない。では、ロジパイ?
なんでそつちを変へるんだよ!「パンが無ければパイを食べればいいぢやない」みたいな感じの名言で有名な昔のお姫様か!
ヒントの通りに、つい食べたくなる物で、「パン」と響きの似た物をさしあたり口に出してみたんですけども。
あ…はい、おれが要らんこと言つて混乱させました、すんませ〜ん。ウフ、ファウフ。
それロジバン語で謝つてるのかもしれないですけど、何か笑ひ声を押し殺してるみたいで若干イラつきますね…
完全におれ個人の印象だけど、英語の“Oops!”と響きを合はせに来てる感じがするよね、語形を、{u'u}は。{fau'u}の方はグッさん…もといguskant氏が新しく作つた、「ごめんなさい」を意味する言葉です。語形の由来としては、{fraxu}(“赦す”)+{u'u}ね。
はあ、さうなんですか。そんな具合にあなたが小出しにしてくる断片的な情報でしか、ぼくは知り得ないものですから。
きちんとまとまつた形で、何か勉強めいたことをするとしたら、それ用の別のブログ?だかチャンネル?だかを立ててそこでやりますんで、ここでは言語の名前と響きに馴染んでくれたらそれで十分だな〜、と。実際、君も三度目の正直で思ひ出してくれましたやん、「ロジバン」の名前。聞いてたよ。
何か行事のあるたびにぼくを呼びつけてはあなたが色々と聞かせてきましたからね、散々。結局、名前以外はよくわからないしおぼえてないままですから、あれを勉強の内に入れないのも尤もですけど。
別にロジバンに限らないけど、長くやればやるほどますます「よくわからん」が増えてくるもんでな。その上、それぞれの期待と思惑を抱いた人々が集まつてはそれぞれに不満や幻滅を覚えて立ち去つたりいがみ合つた軌跡が交錯するし。それを解きほぐして提示してみせるだけ気力や情熱は、おれには無いです。
はあ、さうですか。…このまま「よくわからん」のとこばかり掘り下げていかれると困りますので、ひとまづ今日の本題に戻りませんか。
ヴィホ。…で、今回はあくまで「補足」てことだけで、それ以上は特にこれといつた話題を決めてないんだ。何話すか忘れたわけぢやないよ?少し待つてね。
ああさうだ、「よくわからん」とは少し違ふけど、ロジバン、学び始めのころは、どことなく「つるつるして、つかみどころがないな」と感じたのを憶えてる。
それで、別の誰かが以前その「つかみどころのなさ」と似たやうな印象を表明してゐた気がしてたんだけど、具体的には多分、「無色透明」「無味無臭」といつたやうな形容の仕方で、だね。
特にこの、先程も少し話題にしたguskant氏が嘗て用ゐた「無色の粘土」の譬喩には、その一端が表れてゐるやうに思ひます。
「(中略)個人的には、ロジバンの面白いところは表現力の豊かさです。粘土細工に例えると、他の言語はもともと色が付いた粘土で、色を変えにくいのですが、ロジバンは無色の粘土で、表現者次第でいろんな色を付けられます。」(@fotono)
前回、ロジバンを漠然とした色々なキーワードでザッと再紹介してみたときに、かうした「『無色透明・無味無臭』の言語」てのを言ひそびれてたな〜、と気がかりだつたからさ。なので、これが補足その一です。
はあ、さうですか。…「つかみどころがない」から「無色」とか「無味」にどうつながるのか、いまいちよくつかめないままですけども。
あら、さうですか。うーん、別々の感覚器官に訴へかけながら様々に表現されてはゐるけど、元を辿ればどれも同じことを言つてゐる気がしません?視覚に訴へれば「無色透明」、味覚になら「無味無臭」、そして触覚だと先述の通り「つるつるしてつかみどころがない」。そんな感じのつながり。
粘土は思ひきりつかめますよね。
え?ああ、さつきのグッさんの譬喩ね。まあ、色や風味の有無はどうあれ、粘土をこねるやうに形を弄つて実際に何かを作るには、ある程度はその言語での表現のコツを…それこそ「つかむ」必要があるかもね。それが学習です。
うん、いくらか肯定的に「無色・無臭」と評価してるのはほぼほぼロジバン学習者・経験者に限られてる感があるから、無意識的に言及を避けたのかもしれないな、前回。ある意味では内部者の感想ですもんね。
裏を返せば「素気無い」とか「冷たい」とか「言語としての活き活きした感じが見えない」とか、ネガティヴに捉へることもできるし、実際にどこかしらでそれに類する感想も散見された気がする。
それどころか、全く正反対の感想も紹介してませんでした?前回。「吐瀉物みたいに汚い」みたいな感じの。
え?ああ、ミネスキさん…もとい、多言語学習者のすきえんてぃあさんが嘗て用ゐた表現を、前回おれがパク…抜萃して口にしたやつですかね。
まあそこまで圧縮すると一連の発言の意図がいくらか歪められるかもなので、やはり元スレの最初のツイートにもリンクしておきませうね。
ミネスキさんの場合はその共感覚的な洞察で以て全体的な印象を語つてくれたのだと思ふけど、部分的な汚さ、例へば発音しづらい子音連続とか規則的でない接辞形とかについての違和感も、これまでしばしば表明されてきたところです。
おれはロジバンの、何物にも染まらずに綺麗な部分も色々入り混じつて汚い部分も、清濁併せて、丸々まとめて好きですね。どちらか片方だけではここまで縁は続かなかつた。
といふか、個人的に、吐瀉物的言語といふキーワードは寧ろ前面に推していきたい!ロジバンに新たなアイデンティティを齎してくれさうですし。ジボ語ならぬゲボ語、語呂も良えやん?
いや、この期に及んでまた何か新たなイメージを付加されても、結局ぼくには何が何やらなままなので…。ちなみにその「ジボ語」は、ロジバン語の別名といふことで解釈すれば良いんでせうか。
あ、はい。そのやうに解釈して宜しいです。…なんだよ、すぐに通じないんなら、わざわざ語呂を合はせに来てもお寒いだけだつたな。
瞬時には無理です。まあ、あなたがいつも他人様の元々の名前を勝手に縮めて渾名で呼ぶものですから、先程の「ジボ語」も同じくあなたの中だけでの呼び名なのかな、と思ひますが。
「ジボ語」については幾らか由緒ある呼び名だとは信じてますけどね。…まあ順を追つて話すのは面倒いので、さしあたり書き出すとこんな感じ:
「ジボ語」 ← {jbobau} ← {lojbo bangu}(“lojban的な”“言語”) ← {lojbo}(“lojban的な”) ← {lojban} ← {logji bangu}(“論理”的“言語”)
はあ、左様ですか。ならばそこそこ普及した呼び名なんでせうか、それは。
いやあ、この名で呼んでるのはほぼほぼおれだけみたいです。
なら妙な渾名をつけるのは止して素直に一般的な名称で呼んだ方が宜しいのではないですか。
んーまあ特に何も無ければ普通にロジバンて呼んでますけど、ロジバンの「ロジ」の部分の必然性に強い疑念や忌避感を覚えたときなんかにジボ語て呼んでみたりしますねおれは。
ああ、はあ。そもそもほんとにその名の通りに論理ぽい部分がロジバン語にあるのか怪しいですもんね、あなたの話し方からすると。
それはあるから!論理的な側面あるから!まあたしかにブチ壊したい先入観の筆頭ではあるけど、全く無いと思はれるのは不本意ですので!

うーん、これとかこれとか、如何にも論文めいた作例を見せれば、百聞は一見に如かず、何となく察してくれるかな。

いや、いきなり見せられたところで、論文も童話も今のぼくには同じにしか見えませんよ、何書いてあるのか読めないんですから。
あ…はい、そやね。他人様の威を借りるのも宜しくないですし。ウフ、ファウフ。
しかし、何度聞いても、何だか笑ひ声を押し殺してるみたいですね、それ…
そこは慣れてもらふしかないなあ。まあでも{u'u}や{fau'u}の«'»の部分は喉奥の[h]の音でなくとも全然良くて、舌と歯で出す[θ]とか舌脇の[ɬ]とかで発音してやるとまた違つた響きにできるね。ただおれが面倒臭い。
で、ロジバンの実際に「論理ぽい」部分ね。自前で話すとなると少し面倒で、先づ「論理」とか「論理的」て言葉から想起される意味には日常から数理学的領域に至るまで割と幅があるんですよね。それでロジバンの場合は……何かこの路線で話すのやつぱりシンドいので、またの機会に、他所でじつくりと。…良いよね?
ええぇ、なんですかそれ……多分そこが一番大事な部分なんぢやないですか?
核心的だけど必須とまではいかないし、何より話してて無性に悲しくなつてきまして…おれがこんなだから、「まち」から離れたくなるのも解るよね。
いやよくは解りませんけど…あなたの方の問題も根深い感じがしてきますね。
まあ少なからず、せやね。…ああだめ、今どんどん気分が沈んできてますんで、ここでお開きにしません?
はあ、それではお互ひ、お大事に。
あ、君が消える前に一応予告しておくと、次回もこんな感じでゆるく補足的な話をしようかな、と。個人的にもつと優先度が高い事項があつた気がするんだけど、今回は何か序盤で色々吹つ飛んでしまつた感があるからね。仕切り直し。
えっ、また補足回なんですか…
うん。そんなわけで今回はその一の補足の、そのまたその一といふことで。次はその一の補足のその二です。
まあそれはそれとして挨拶しておきませうね。ショホロド〜。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色