『東京のカサノバ』くらもちふさこ

文字数 958文字

 次に私の節目に刻まれている本は少女漫画です。

 くらもちふさこさんの
 『東京のカサノバ』

 めばえ→科学と学習→小学○年生→なかよし→りぼん→別フレ→別マと、購読雑誌は行きつ戻りつ、時にはお小遣いと相談しながら2種類の雑誌を買ったりもしながら移行していきました。

 その後、Oliveやnon-no、anan、with、MOREなど女性ファッション雑誌を買うようになりました。20代半ばになり、仕事をしながら再び漫画雑誌Kissを買い始め、最新号の発売が待ちきれなくて、書店より早く店頭に並ぶコンビニを見つけて仕事前に寄って買ったりしました。

 初めて、母に漫画の単行本を買ってもらったのが小学6年生の頃、くらもちふさこさんの『東京のカサノバ』でした。
 本屋さんで母に「すきな本を買ってあげる」と言われ、姉妹それぞれすきな本を選びました。私は漫画を買うことにして、表紙を見ながら吟味しました。透明なビニールで包まれていて中身は見られなかったので、表紙買いです。
 『東京のカサノバ』の1巻の表紙を見て「これだ!」と思いました。
 大当たりでした。
 新しい世界を覗いたような気持ちになりました。
 2巻は予約して自分のお小遣いで買いました。
 早く続きが読みたくて、待ち遠しくて待ち遠しくて、何度も本屋さんに「まだですか?」と聞きに行って……。昭和の、まだ近所に個人経営の本屋さんが数件あった時代です。

 都会っぽくて大人っぽくてドラマチックなラブストーリー。その中に人間的な温かみがじわじわと流れているのです。
「どんなにかっこよくて素敵な人もみんな人間で、そこには生活がある」というふうに。
 クールだけど温かい。
 おしゃれななかにユーモア。
 クールとホットの絶妙なバランスがたまりませんでした。
 それに登場人物のキャラクターがほんとうに魅力的なのです。
 大前提として抜群な画力。絵のタッチもそれまで読んでいた少女漫画とは少し違う気がしました。

 少女漫画は他にも、陸奥A子さんや小椋冬美さん、小田空さん、萩岩睦美さん、聖千秋さんも大好きでした。

 そのなかでもくらもちふさこさんの漫画との出会いは私にとって特別でした。

 こども心にもぼんやり、私が素敵だなと思う大人の世界、かっこよくて温くてユーモアがあって……そんな世界観の漫画でした。
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