第4話 先生が不登校になったので

文字数 1,014文字

【起】
 夏休み明けの四方山(よもやま)小学校。六年生の葛西則夫は久しぶりの学校にワクワクしていた。友達も皆元気に登校した。ところが、担任の安東先生が姿をみせない。不思議に思いながら校庭での朝礼に向かったが、そこにも児童だけが集まっていて、他のクラスの先生も、校長先生も現れない。仕方なく教室に戻る。昼近くまで騒がしく過ごしていたが、流石に飽きて、不安にもなってきた。
【承】
 昼頃、一学期に来てくれた教育実習生が教室にやってきた。則夫もなついていた女子学生山北しおり。再会の喜びも束の間、彼女は重大な事実を告げる。夏休みのうちに四方山小学校の教員間でのいじめが発覚した。一部の教員が出勤停止、あるいは退職となったが、残りの教員も心理的外傷を負い仕事が出来ない。急なことで新しい教員をすぐには確保できない。新学期当初の今週は、地元教育大学の学生がカバーすることになったが、翌週以降は未定だというのだ。
【転】
 則夫たちもことの重大さに気付き、考えた。ふと、勉強嫌いの小南裕司の宿題ノートを覗いてみた。ひどい出来だと思ったが、小数点の位置をきちんとそろえて計算すればもっと正解が増えそうだと思った。進学塾で先取学習を進めている則夫は、山北の許可をとって、皆に勉強を教えることにした。また二年生の妹のことが気になり、提案した。ニ年生は一年生に、三年生はニ年生に、というように一つ上の学年が下の子に教えにいく。六年生は則夫をはじめとする数人の先取組が教える。音楽や体育も得意な児童がいるものだ。友達の意外な特技も分かって面白い。もちろん山北には監督をしてくれるように頼んだ。こうして山北とも親密になれるのは嬉しかった。そして学校の雰囲気が変わった。新学期で学校に来られなくなっていた子も、週末には登校してきた。
【結】
 保護者会などから早急な対応を求められ、いくつかの学校から数人の教員がやってくることになった。また新しい校長は市教育委員会から派遣されてくるらしい。せっかく成果が上がっているように思えるのだが、やはり大人の社会から見るととんでもないことをやっているようだ。則夫たちは反対したが、従わない場合は中学受験に必要な調査書を書いてやらない、などと脅された。また山北しおりも大学を卒業させない、などとパワハラをうけてしまった。
 結局大人社会に屈した形になってしまったが、この時の経験を生かして、四方山小学校卒業生は、その後各方面で活躍したという。
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