伍話✶お金持ちのお嬢様?
文字数 975文字
「ここが……寮、?」
想像していたのよりも大きく豪華だ。
中に入ると広い談話室があり、その左右に
入口があり、片方は男子寮、もう片方は
女子寮となっているらしい。
どうやら男子寮は左側のようだ。
ルーリアは流石に男子の中に紛れるような
趣味は無いらしく談話室の中心にある
一番大きなソファに身を投げ出すと言った。
「さ、ここからは私、入ったら校則違反
だから一人で行ってねー。流石に入学前から
違反で罰されるなんてことしたくないからね」
「わかった………その、ありがとな。」
「いえいえー、私ここにいるから荷物整理
し終わったらまた来てよ。学園案内したげる」
その言葉に俺は頷くと少なすぎる荷物を
抱えながら男子寮へ入っていく。604号室は
その塔の6階の4号室、という意味だった
らしく鉄の格子で作られた籠(エレベーター
とかいうらしい)に乗って上に上がらねば
いけなかったので少し不便だ。しかし、
そんな想いも部屋へ入ればすぐに吹き飛んだ。
「景色……凄いな……」
6階といっても談話室迄にも沢山の階段を
上っていたので実際には何十階になるの
だろうか。あんなに大きく見えた街が、
まるでミニチュアの玩具の町のように見える。
人なんて米粒よりも小さい。
暫くその景色に見とれていても良いが、
あの部屋にルーリアを置いてきたことを
思い出して慌てて荷物ほどきにかかる。
普段着の着物が数枚……どれも紺色か黒
しかないが。知らせが来たときに渡された
ローブ二枚、後は何に使うかよくわからない
杖と懐中時計………。最後に愛刀が二本。
少ないが、一応これが全財産である。
部屋には家具もある程度は揃っているので
まあ、困ることは無いだろう。
支度を終えて部屋を出た如月の耳に、
突然こんな会話が入ってきた。
『ねぇ、見た?』
『見た見た、あの女だろ?青い髪の』
『あれが例のお嬢様だってさ』
『あんなのが?この学園の未来が危ぶまれる
ねぇ………。』
“例のお嬢様”?青い髪……もしかしてルーリア
の事か?この学園の未来がかかっている…。
ノーランディア魔法学園は、代々聖王が
跡を継いで経営している。つまり、
現在の学園長は…確か、リュンヌ・ロフェニカ
ドール・ノーr……は?
「まさか………アイツ……」