大企業は無香料を作ってくれない?

文字数 1,581文字

 事の発端はシャンプーの香り付けが変わった事、甘ったるい香りが気持悪くて使えなくなりました。
 元々香りの物は嫌いでしたけど、十代の頃はシャンプーも洗剤も香りが無い物なんて無いって思っていました。
 しかし、いよいよこれでは髪が洗えないと探したところ、見つかったのはとある老舗メーカーの一銘柄だけ。そのメーカー以外、無香料タイプのシャンプー液なんて置いていませんでしたし、売り方も、どちらかと言えばベビー用品の延長の様な感じでした。

 同じように、香料がだめだとなった時、無香料の洗剤という洗剤を探しました。
 香料が入っていても、合成香料でなければ多少は大丈夫だろうと、全成分表示をまさしく目を皿にして眺めました。
 その結果、ECサイトでまとめて購入するのが安くて全て揃うという結論に至りました。無香料というのは往々にして無添加のプレミアが付けられており、シャンプーは店頭販売なら他の商品の二倍近い価格になる事さえあります。しかも、無香料タイプの衣類用中性洗剤、いわゆるデリケートウォッシュ用の洗剤はまだ見つからず……。ウールやシルクは石鹸で洗えますけど、少し不便ですよね。
 ちなみに、その無香料の洗剤を作っているのは石鹸や洗剤がメインの老舗企業……手広く家庭用品を作っている大企業の製品に無香料タイプは見つけられませんでした。

 ……大企業の洗剤をいくら探しても、無香料が見つからないのは何故なのでしょうね。
 もちろん、誤飲防止の為に変な香りを付けておく事は時に必要です。しかし、銘柄によってはフルーツの香りを付けているなど、子供の誤飲防止に必ずしも役に立たない様な商品も有ります。だとしたら、無香料にしてもあまり変わりはないのではないでしょうか。それだけでなく、本当に認知の面で支援が必要な方の場合、中には味や香りの概念が一般的なそれと異なっているケースもある様ですから、香り付けが絶対に安全という事も無いでしょう。むしろ、安全ロックを徹底する方が重要です。
 あまり陰謀的な事は言いたくありませんが、香料を作っている会社が儲からなければならないから、何が何でも香料を、今や過剰なほどに配合しなければならないのかと疑いたくもなります。このまま使い続けて規制されたら、元も子もないのですけど。
 結局、一般的な小売店に流通しているのは、仕入れも販売も安くできる、沢山の人が知っていて沢山の商品が売れる大企業の製品が中心です。しかし、そこにはこうして需要が有るはずの無香料という選択肢が皆無に等しいのが現状です。

 大企業の製品の中にも、微香性や無香性といった選択肢は有りますが、香料不使用という選択は大抵の場合できませんし、微香性と言いながら、結局は強い薬品臭と香料臭の混ざった香りの製品も有りました。今までは当たり前の事でしたが、一度疑ってかかると、これは消費者の権利が侵害されている状況にも等しいと言えないでしょうか。
 こうなると香料を使いたくないという消費者は、大手企業の製品を使う事を諦めなければなりませんし、小売店で購入出来なければ通販を探すしかありません。そこで大手企業を糾弾する事は簡単ですが、裏を返せば、大手企業はせっかくの顧客を喪失し、自社製品を売ってくれる小売店の減収にもつながってしまいます。
 他方、小売店は小売店で、ネームバリューのある大企業の製品でなければ沢山売れず、安くも売れませんから、需要が有っても知名度が低く殊更に安くも売れない無香料製品はなかなか入荷できないのでしょう。
 とはいえ……今はコマーシャルで見たからといった理由で、大手企業の製品を選ぶ消費者は多いかもしれませんが、もし、無香料を求める機運が高まった時、それに応えなかったとすれば、大手企業はとんでもない損をする事になりはしないでしょうか。結局は、自分の首を絞めているのですよ。
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