少しだけ知っておいて欲しい事

文字数 1,558文字

 皆さんは、化学物質過敏症という言葉を目にした事が有るでしょうか。
 中にはエセ科学とかトンデモ化学だ、と言う人が居るかもしれませんが、いわゆるシックハウス症候群と同じく、何らかの化学物質によって体調に異常をきたす症状の事です。アレルギーに近いですが、花粉症の様なアレルギー反応以外の頭痛や倦怠感、精神的な不調を起こす事も有ります。一説では免疫に関係しているとは考えられていますが、まだ未解明な疾患のひとつと言えます。

 もうひとつ、香害という言葉を知っているでしょうか。
 文字通り、香りによる環境公害、それも、本来は芳香目的で使用される香料による健康と環境の問題です。
 被害を訴える人間の多くが、一部からは懐疑的に見られている化学物質過敏やその疑いのある当事者でもあり、懐疑的な見解を向ける人は少なくないかもしれません。
 事実として、原状では芳香目的の香料はいずれも法的な規制を受ける危険物ではありませんし、やり玉に挙げられる柔軟剤などは、大企業が大々的に宣伝をして販売している、ごくありきたりな商品です。しかも原因が香り故に好みの問題、つまりはわがままだとも捉えられがちです。
 しかしながら、マイクロカプセル入り香料という問題は看過できないのではないでしょうか。これは香りを長続きさせる為、毒性の有るイソシアネートを原料とする微細カプセルに香料を詰めた物で、主に擦ると香りが戻るタイプの柔軟剤に配合されています。
 何が問題かと言えば、排水中に含まれるカプセルは微細プラスチックによる海洋汚染問題と結びつき、空気中に飛散すれば無差別に香料が環境中に放出される上、カプセルは大気汚染の原因となる微粒子になってしまうのです。もちろん、香料自体にもその中には生物分解性の低さや生体濃縮される性質を持つ物が有り、人間に対する直接的なアレルギーの原因とも考えられるなど、問題は有ります。
 そして、ごく身近な所でも、自分が付けていない香りを他人から移されるという出来事が、日々実際に起こっています。

 化学物質過敏症の訴えも、香害の訴えも、目に見える物が原因ではないので、簡単に理解できる物では無いでしょう。しかも化学物質過敏症に関しては、正しく診断できる基準も無ければ、その判断ができる医師も十分に居ませんし、香害の原因となっている合成香料に関しては、法的な規制を受けている物ではありませんので、使用に関しては企業と消費者の判断に委ねられています。
 それでも、そうした目に見えず基準も無いあやふやな症状や問題によって、生活に支障をきたすほどの困難に直面している人間が居るのも事実です。

 ……私自身もホルマリンを扱う職場で蕁麻疹が出たり、柔軟剤の強力な香りで突然の頭痛がしたり、特定の洗剤の香りに対して脳が拒絶する様な焦燥感を覚えるなど、かなり危ない体質です。それでも、それまで使用されてきた化学薬品や香料に、一定の存在意義が有る事や、代替する物質の無い化合物の存在を一概に否定する事はしません。
 ただ、今の世の中では、特に香料が濫用されている状態だと考えています。とりわけ香りの強い柔軟剤が大きく売り出されるようになってからというもの、洗濯洗剤からトイレットペーパーの香り付けに至るまで、香り付けが強力になり過ぎている様に思います。同時に、ドラム式洗濯機の様に節水志向の洗濯が増えてきた事で、洗剤自体の残留による影響にも懸念があります。

 それでも、誰か一人でも、やたらと強い香り付けをする人が減ってくれれば、私の様に診断されていないけれども香料で困っているという人は、ほんの少しだけでも救われます。
 これは、ほんの少しでも救われたい立場の人間が、少しだけ香料の事を考えながら、どうやっていろいろ洗っているのか、という事の雑記です。
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