文字数 986文字

ではアネゴ、お客さんに

『にゃんにゃん水』を出してあげてくださーい。

承知した。物を運ぶのは得意だ。

このコップに水を入れていけばいいんだな。
(あっ、さっきの迫力あるメイドさん)
どうぞお嬢様、『にゃんにゃん水』でございます。
あ、ありがとうございます……。

(なんだか、任侠モノのヒロインになった気分……)
って、わわっ!?
こ、こぼれちゃいそうっ!
人間への恩返しの気持ちを込めて、いっぱいまで入れておいた。
表面張力の限界ぎりぎり……
っていうか、これをキッチンから持ってきたっていうの!?

おそるべきバランス能力……!
さすがはアネゴだにゃー!
気持ちはわかるんですけど、これではお客さんが飲みにくいですよ~

口をつけただけでこぼれてしまいます。
??

この方が水を舐めやすいじゃないか。
水が少なければ舌が届かないだろう?
それは猫基準の考え方ですよ、アネゴ!

お客さんは人間で、今は私たちも人間の姿なんですってば~
あっ、大丈夫ですよ。

こうしてストローで、上からそっと吸えば……ほらっ
おーっ!

お嬢様、ファインプレーだにゃん!
えへへ
すまない、恥ずかしい失敗をしてしまった。

次からは上手くやる。
気にするコトないですよ~

お客さんも楽しそうでしたし!
でもたしかに、コップに口を付けるのは飲みにくいよねー

床にお皿をおいて、ペロペロ舐めたほうがお水は飲みやすいにゃん。
人間の基準ではとっても行儀が悪いことだから、絶対にやめなさいよっ
いろいろと勉強になるな。

さて、この後はどうすればいい。
お客さんからお声がかかるまでは、他のお仕事をしながら待機ですね。

声を掛けられたら、すぐに対応が出来るようにしましょう。
承知した。

一切の気を緩めることなく、職務に当たることにしよう。

(なんだか、すごく視線を感じるんだけど……斜め後ろあたりから……)
(じーっ……)
(に、睨まれてるーっ!?)
あのお客さん、メニューを持ったまま動かないね。

心なしか小さく震えているようにも……
……あれが原因ね。

観葉植物の陰から、アネゴが獲物を狙うかのような目つきで見ているわ。
(平常心、平常心……ここは秋葉原のメイド喫茶であって、サバンナの平原ではない……)

(携帯でも触って落ちつ……あっ!)
お客さんが携帯電話を!
!!!

(シュタタタタッ!)

(ぱしっ!)
どうぞ、お嬢様。
あ、ありがとうございます……

(守ってくれようとしていたの?)
さすがはアネゴだにゃー!
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