第29話 NNWM-7
文字数 1,021文字
「思い知ったわ……」
翼を生やして退却していった石獣の魔力が感じられなくなる。その途端に右脚から緑色の光と鱗のような多層の力場が焼失して、義足が自壊した。
「聖女と呼ばれる御方の言葉は、重い」
あの石獣は、私の右脚を奪って喰ったタイプとは違って……死体に寄生していた。声と右腕がお気に入りだとか言い残しやがって
意思あるマントが咄嗟に右脚に巻き付いて、私を支えてくれた。感謝の言葉を魔力に乗せて送ると、“リロドンの修復者”がこちらへ寄ってくる。
「左右の足音が違うとは思っていたが、霊獣ヴェジタルの鱗を纏う資格を機械仕掛けの脚部に持つとは……」
「修復者、この脚部を修理対象にならないか? 別に特殊な仕組みは積んで無いし、元は軍用品だ」
「足音からして、どの国の機械仕掛けなのかは理解しているつもりだ。大丈夫だろう。お前の労働の対価に修理してやろう」
会話を切り上げたがらないので、修復者の方へ視線を向けた。
「あの人と混ざり合ったような……石の獣はなんだ?」
「長々と説明するのは、私の役目じゃ無いと思うけど? というのは冗談で、私の次元ではそのまま石獣と呼ばれている。自分の気に入った人間の身体を喰らうのが趣味な奴ばかりだと思ったが、今回で死体に寄生する粘菌みたいな奴もいることが判明した」
「お前の知り合いか?」
「元恋人。まさか、あいつが死ぬなんて思っても見なかった。しっかり仇をうてなければ弔ってもやれないとは……」
「少し聞きすぎたな」
「いいさ、修理代を値引きしてくれたらそれで良い」
「無事に収束したようじゃな」
少し煤けた見た目になった管理者までやってくる。
「どうやら、決着はついたようだな。神殿へ大きな損害を与えなかったことには感謝する」
「その様子だと、お眠りの聖女様に影響はでなかったようだな。あなた曰く、あの緑肌で頭の中がお花畑みたいな連中は?」
「惜しいことに生きておる。ああいう権力欲求からこぼれ落ちた物達の生存能力は賞賛に値するな。お前達、聖女様がお呼びだぞ」
私と“リロドンの修復者”は、思わず腰を下ろした。
「足が壊れたんだ、休憩させてくれ」
「この話が完遂されれば、新たなゲートが利用できるようになるんだぞ」
「じゃぁ、明日にさせてくれ。もうクタクタなんだ」
わがままな奴め!という罵声と共に、管理者から赤黒い液体で満たされた酒瓶が投げ渡される。
「我らゴブリン種特性の“根酒”だ。人間のポーション液などより、よく効くぞ」
思わず、ため息と苦笑が漏れた。
翼を生やして退却していった石獣の魔力が感じられなくなる。その途端に右脚から緑色の光と鱗のような多層の力場が焼失して、義足が自壊した。
「聖女と呼ばれる御方の言葉は、重い」
あの石獣は、私の右脚を奪って喰ったタイプとは違って……死体に寄生していた。声と右腕がお気に入りだとか言い残しやがって
意思あるマントが咄嗟に右脚に巻き付いて、私を支えてくれた。感謝の言葉を魔力に乗せて送ると、“リロドンの修復者”がこちらへ寄ってくる。
「左右の足音が違うとは思っていたが、霊獣ヴェジタルの鱗を纏う資格を機械仕掛けの脚部に持つとは……」
「修復者、この脚部を修理対象にならないか? 別に特殊な仕組みは積んで無いし、元は軍用品だ」
「足音からして、どの国の機械仕掛けなのかは理解しているつもりだ。大丈夫だろう。お前の労働の対価に修理してやろう」
会話を切り上げたがらないので、修復者の方へ視線を向けた。
「あの人と混ざり合ったような……石の獣はなんだ?」
「長々と説明するのは、私の役目じゃ無いと思うけど? というのは冗談で、私の次元ではそのまま石獣と呼ばれている。自分の気に入った人間の身体を喰らうのが趣味な奴ばかりだと思ったが、今回で死体に寄生する粘菌みたいな奴もいることが判明した」
「お前の知り合いか?」
「元恋人。まさか、あいつが死ぬなんて思っても見なかった。しっかり仇をうてなければ弔ってもやれないとは……」
「少し聞きすぎたな」
「いいさ、修理代を値引きしてくれたらそれで良い」
「無事に収束したようじゃな」
少し煤けた見た目になった管理者までやってくる。
「どうやら、決着はついたようだな。神殿へ大きな損害を与えなかったことには感謝する」
「その様子だと、お眠りの聖女様に影響はでなかったようだな。あなた曰く、あの緑肌で頭の中がお花畑みたいな連中は?」
「惜しいことに生きておる。ああいう権力欲求からこぼれ落ちた物達の生存能力は賞賛に値するな。お前達、聖女様がお呼びだぞ」
私と“リロドンの修復者”は、思わず腰を下ろした。
「足が壊れたんだ、休憩させてくれ」
「この話が完遂されれば、新たなゲートが利用できるようになるんだぞ」
「じゃぁ、明日にさせてくれ。もうクタクタなんだ」
わがままな奴め!という罵声と共に、管理者から赤黒い液体で満たされた酒瓶が投げ渡される。
「我らゴブリン種特性の“根酒”だ。人間のポーション液などより、よく効くぞ」
思わず、ため息と苦笑が漏れた。