18、歌
文字数 525文字
――燃やしてしまおう。
心に浮かんだ言葉に、テンはハッとした。
いや、そんな事よりも。
竜はテンを見向きもせず、要塞艇に向かって駆け行く。
ハルを助けなければ――そう思った瞬間。
要塞艇が火を噴いた。砲撃だ。
竜目がけて放たれる。
そしてその一瞬後。
竜も炎を解き放った。
それはこれまでで一番巨大な炎。
二つの炎がぶつかった瞬間、辺りに飛び散ったのは閃光。
焼け付くような、痛み。
衝撃に吹き飛ばされる。打ち付けた体が痛む。
だがそれで、我に還る。
ハルを救わなければならない。
このまま行かせるわけにはいかない。
砲撃は止まない。竜は天高く飛び上がった。
苦しい。
頭が何度も打ち付けられるように痛む。
心と体がついて行かない。
知らずとテンは剣を振り回す。
ポツリと思った、たった一言。
助けてくれ。
……その直後だった。
そこにあるはずのない音を拾った。
これは……歌だ。
歌が聞こえる。