薬玉と赤飯 (2021文芸思潮現代詩賞奨励賞)

文字数 262文字

お赤飯炊かれたくなかった
あたしのあの日

くすくす
薬玉
おめでとうの薬玉が
頭のなかで割れた

痛い、痛い、痛い
「割れるように」痛い
頭が「割れるように」痛い
そうしたら頭は割れた

くすくす
薬玉
おめでとうの薬玉

今日は何回めかの月のモノの日
いつも通りあたしの頭は割れた
しくしく痛む下腹部
あの日のおめでとうと
みんなの声

これで一人前の大人の女になったね

だけど、あたしは女ではなかった
あたしのこころは男なのに

お赤飯炊かれたくなかった
あたしのあの日

下腹部を傷ませず
白いお玉杓子を出したかった

おめでたくもない
後ろめたい
くすくす
薬玉

お赤飯炊かれたくなかった
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