猫は九つの命を持っている、という意味だ。
要は、猫はしぶとく長生きという意味らしい。
それはともかく、俺は
猫を飼う事になった。
エコービルの占い師に、急に勧められて。
何か運命的な出逢いがある、とか言われて。
さて、晴れて明日から大学生だ。
色々あって、地元の大学の理工学部に入学した。
もっと上のランクの大学も目指せると言われたが、ここにした。
俺にはここが丁度いい、地元の吉祥寺(東京 武蔵野市)も居心地がいいので。
入学式の帰り道ある女の子とすれ違った、着物姿だったが何故か妙に淋しそうだった。
何故か、凄く印象に残っている。
また、会えるといいな。
それはそうと、友人の幹雄と一緒に軽音サークルに誘われた。
高校の時のバンドの先輩も居たので、一緒に入る事にした。
さて、大学を一回りしてみようかな、ここは
図書館か。
あれ…あの子が居る。
「へー造形学部の入試作品の展示会か、サークルの時間までちょっと時間あるから寄ってみようかな」
「ん! この絵凄く綺麗だな、特に赤の色使いが凄く綺麗だ」
「あ、っそうだったんですか、綺麗な物でつい見惚れてしまって」
「ありがと、私しのぶって言うの、作品の下にも書いてあるけど。ところで君、学部はー?」
「そっかー、じゃああんまり会う機会ないかもだけど宜しくねー、またねー」
彼女は、早足で去ってしまった。
あの、しのぶって子も綺麗だったな。
「確かお姉さん、バンドのボーカルだったよね。ライブ見に行った事あるよ」
「良く知ってるねー、私はピアノとヴァイオリンできるけどあんまりロックとか分かんないんだー。教えてね!」
元気そうな女の子だな、それにしても大学生には見えないぐらい幼いな、胸は大きいけど。
先輩「ところで、それ使ってるギター見た事ないメーカーだけど、どこで買ったの?」
「うん、アンプもギターも自分で作ってみたんだ、工作は得意だからね」
幹雄
「それより吉祥寺行こうぜー。またエコービル探索しようぜ」
勉強できない癖に俺と一緒の大学に入ろうとして、何とか社会学部に補欠入学した奴だ。
エコービル、吉祥寺の駅前にあるビルだ。
駅前にあるのに怪しい店が多く、空きも多いせいで幽霊ビルとか呼ばれているらしい。
色々、都市伝説もある。
まあ、ただ入り口が解りにくいだけだ。
猫を飼うように占った占い師も、猫を買ったペットショップも、ギターとアンプを作った時にもリサイクルショップとは名ばかりのガラクタ屋と秋葉原でパーツを集めて作った。
立ち入り禁止のとこも多く、幹雄が探索したがっている。
困った者だ。
隣に座っていた子、どこかで見た事あるな…。
あっ!
昔『恋の天使』ってドラマでヒロインやってた女の子だ。
「出てたドラマ好きでした、特にクリスマスのシーンが」
「そうなの、でももう昔の話よ、それよりさー、今の授業聴いてなかったからノート見せて」
あら、周りが騒がしい。
やっぱり、皆に気付かれてるみたいだな。
本人は、嫌そうだけど。
「さーてみんな集まったので盛大にやりましょう!!」
はー、このハイテンションな乗りは苦手だな…。
どうしよう…。
ひなこ「あっ私ですか!! 私は昔このサークルに居て、今は保育士やってます」
「あっそうだったんですか…。いやお一人だった者で…」
「私も友達に無理矢理連れて来られたんですけど、どうも男の人は苦手で…。あっ違います! 別にあなたの事嫌いな訳じゃないです!!」
「おっしゃーやって来たぞー、可愛いレイヤー居るかなー」
アニメには興味あるがコスプレにはあんまり興味なかったが、強引に誘われて付いて来てしまった。
今日は、コスプレ写真集の即売会もあるらしい。
あ、『モンハン』のコスプレか、いっつもプレイしてるし見て行くか。
「いや、いつも俺が使ってる装備でしたけど良く衣装作りましたね」
「あら、めいちゃん戻って来たの? 見て回るんじゃなかったの?」
めい「いやー、なんか暑いし疲れちゃって。あれこの人は?」
「そいや名前訊いてなかったね、私はのあ。この子はコスプレ仲間のめいちゃんよ」
「カメラ持ってるみたいだし良かったら写真どーぞ。ところで随分変わったカメラ使ってるね」
「ああ、これは父親が使ってた昔の一眼レフなんだ、まだフィルムだしオートフォーカスも補正機能とかも一切無いけど、壊れてたの自分で直したんだ」
「お兄さんもしかして工作とか写真とか得意? 良かったら色々手伝ってよ。写真集に連絡先載ってるからもし良かったら連絡して」
電気回路設計か、まあいつも家でやってる要領でやればいいか。
工学部に女性なんて、珍しいな。
それにしても、帽子を目深に被ってあんまり顔見せたくないのかな?
髪も伸びて来たしそろそろ切ろうかな、幹雄みたいに長髪にする気も無いし。
ゆき
「いらっしゃいませ~。お客さん初めてですか~」
「シャンプーもどないですか~、気持ちいいですよ~」
「そないです、東京長いんやけど未だに抜けへんねなー」
あ!
思い出した、ライブハウスでベース弾いてた人だ!
「お姉さん、あそこのライブハウスでベース弾いてましたよね!!」
「あら! 見た事あったんかいな! またライブやるから来て下さいね~」
「ありがとう御座いました~、ほな、また来て下さいね~」