第5話 私たちらしい付き合い方
文字数 1,399文字
夜は中華料理屋で1000円を少しだけ超える食事を楽しむことにした。私はレモンサワーを、ミライは炭酸の入ったレモンのジュースを頼んだ。
しかし、どうやら店員が間違えてテーブルに置いてしまったらしい。
「ねぇハルカちゃぁ~ん。昼間はさぁ、どうしてウチから逃げようとしたのかにゃあ~」
顔を真っ赤にして、呂律の回らぬ舌で私を問い詰める。
「もしかしてぇ~、ウチのことが好きで、お兄ちゃんを彼氏だと勘違いしてショックを受けちゃったとかぁ~?」
図星だ。
ミライは冗談で言ったのだろう。そんなわけない、と笑って返せば済んだだろうに、私は唇をかみしめて、動揺を隠せず俯いてしまった。
まずい。私の気持ちがばれたら、気持ち悪がられるかもしれない。
しかし、ミライはそっと私の顎に触れて、顔を優しく持ち上げる。
「んっ……んんぅ!?」
瞬間、ふさがる唇。
柔らかくて生暖かい舌が私の口内に侵入し、ぐちゅぐちゅと淫らな音を立てる。
キスされている。
キスされている!
私が。ミライに。唇を奪われて、舌を絡ませて、深く激しいキスをしている。
「ぷはぁっ……はぁっ、はぁ……」
「えへへ……ハルカちゃんにはじめて、捧げちゃった」
楽しそうに、そしてセクシーにささやく。唾液で潤った彼女の唇と、私の唇を唾液の線が繋ぐ。
夢にまでみたキスだった。
私はとっさに、言った。
「い、いけませんっ」
「え? だめだった? ごめん……」
だめではない。だけど、だめなのだ。
私は震える声で、続ける。
「私はミライさんのことが好きです。だからこそ、ダメなんです。ミライさんにはたくさんの友達がいて、青春があって。私は大人で、友達にも少なくて、何もかもが違ってて。私と一緒になるせいで、ミライさんが大切な青春時代をどぶに捨てるのかと思うと」
ぽたぽた。熱い水滴が私の両目からこぼれる。
「私はミライさんに、幸せでいてほしいんです。だからっ、だから……」
「えいっ」
弾かれた。
額を。中指で。デコピンだった。
「おばか。ウチはハルカちゃんがいいの。ハルカちゃんじゃないとダメなの。こんなに趣味が合って、一緒にいて楽しい人なんて他にいないし、ハルカちゃんの大人なのにちょっと守ってあげたくなっちゃうところとかも、マジ尊いし。それに、心配しなくてもちゃんと友達とも遊ぶし、青春だって謳歌するよ?」
それから、優しく私の頭を撫でる。
「ハルカちゃんもウチのことが好きなんでしょ? ウチもハルカちゃんが好き。両想いじゃん。ならそれで、問題ないっしょ。難しく考える必要なんて、どっこにもないよ」
ああ、やっぱりミライは凄い。
私がグダグダ悩み続けていたことを、問題ないの一言で片づけてしまう。
そうか。そうなのだ。なんでも楽しんでしまうミライなら、私と付き合うことになったくらいで青春を手放したりはしないのだ。
「それに、大人だって青春出来ると思うよ? 一緒に、謳歌しようよ? 私たちらしく、さ」
太陽の様に眩しい笑顔をみせるミライ。私の雪の様に冷たい心を一瞬で溶かしてしまう。
「本当に私でいいんですか?」
「もちろん。これからもよろしくね、ハルカちゃん」
その夜、私たちは体を重ねた。初めての恋。初めての恋人。お互いにとって大切なはじめてを、クリスマスの夜に捧げあった。
その後?
決まっている。
行為の後はカードゲームをしたのだ。それが私たちらしい付き合い方なのだ。
しかし、どうやら店員が間違えてテーブルに置いてしまったらしい。
「ねぇハルカちゃぁ~ん。昼間はさぁ、どうしてウチから逃げようとしたのかにゃあ~」
顔を真っ赤にして、呂律の回らぬ舌で私を問い詰める。
「もしかしてぇ~、ウチのことが好きで、お兄ちゃんを彼氏だと勘違いしてショックを受けちゃったとかぁ~?」
図星だ。
ミライは冗談で言ったのだろう。そんなわけない、と笑って返せば済んだだろうに、私は唇をかみしめて、動揺を隠せず俯いてしまった。
まずい。私の気持ちがばれたら、気持ち悪がられるかもしれない。
しかし、ミライはそっと私の顎に触れて、顔を優しく持ち上げる。
「んっ……んんぅ!?」
瞬間、ふさがる唇。
柔らかくて生暖かい舌が私の口内に侵入し、ぐちゅぐちゅと淫らな音を立てる。
キスされている。
キスされている!
私が。ミライに。唇を奪われて、舌を絡ませて、深く激しいキスをしている。
「ぷはぁっ……はぁっ、はぁ……」
「えへへ……ハルカちゃんにはじめて、捧げちゃった」
楽しそうに、そしてセクシーにささやく。唾液で潤った彼女の唇と、私の唇を唾液の線が繋ぐ。
夢にまでみたキスだった。
私はとっさに、言った。
「い、いけませんっ」
「え? だめだった? ごめん……」
だめではない。だけど、だめなのだ。
私は震える声で、続ける。
「私はミライさんのことが好きです。だからこそ、ダメなんです。ミライさんにはたくさんの友達がいて、青春があって。私は大人で、友達にも少なくて、何もかもが違ってて。私と一緒になるせいで、ミライさんが大切な青春時代をどぶに捨てるのかと思うと」
ぽたぽた。熱い水滴が私の両目からこぼれる。
「私はミライさんに、幸せでいてほしいんです。だからっ、だから……」
「えいっ」
弾かれた。
額を。中指で。デコピンだった。
「おばか。ウチはハルカちゃんがいいの。ハルカちゃんじゃないとダメなの。こんなに趣味が合って、一緒にいて楽しい人なんて他にいないし、ハルカちゃんの大人なのにちょっと守ってあげたくなっちゃうところとかも、マジ尊いし。それに、心配しなくてもちゃんと友達とも遊ぶし、青春だって謳歌するよ?」
それから、優しく私の頭を撫でる。
「ハルカちゃんもウチのことが好きなんでしょ? ウチもハルカちゃんが好き。両想いじゃん。ならそれで、問題ないっしょ。難しく考える必要なんて、どっこにもないよ」
ああ、やっぱりミライは凄い。
私がグダグダ悩み続けていたことを、問題ないの一言で片づけてしまう。
そうか。そうなのだ。なんでも楽しんでしまうミライなら、私と付き合うことになったくらいで青春を手放したりはしないのだ。
「それに、大人だって青春出来ると思うよ? 一緒に、謳歌しようよ? 私たちらしく、さ」
太陽の様に眩しい笑顔をみせるミライ。私の雪の様に冷たい心を一瞬で溶かしてしまう。
「本当に私でいいんですか?」
「もちろん。これからもよろしくね、ハルカちゃん」
その夜、私たちは体を重ねた。初めての恋。初めての恋人。お互いにとって大切なはじめてを、クリスマスの夜に捧げあった。
その後?
決まっている。
行為の後はカードゲームをしたのだ。それが私たちらしい付き合い方なのだ。