天才美少年作家

文字数 787文字

未来は、編集長に呼び出された。

「田中春馬先生のご指名だ。」

「あの春馬先生からですか?」

編集長は、笑顔で頷いた。


田中春馬は、恋愛小説作家でまだ高校二年生である。


「分かりました。」


編集長の命令は絶対だ。


春馬とは、出版社の地下にある喫茶店で打ち合わせをした。

「松本さんは、あの十五歳の相原竜の担当もしてるんですよね?」

春馬は、熱いコーヒーを飲みながら未来に訊ねてきた。

「そうですけど。」

「いや、ちょっと気になって聞いただけです。」

と春馬は言って次回作の話をし始めた。

春馬は、プロットを話始めた。

さすがだと未来は聞いていて思った。

「僕、松本さんに担当になってもらって嬉しいです。」

「そういえば、聞いても良いですか?先生は何でわたしを指名してくれたんですか?」


「それは初恋の人に松本さんが似てるからです。」

少しお恥ずかしそうに春馬ははっきり答えた。


「そうなんですか、わたしに似てるんですか。」

「はい!そっくりなんです。僕は学校では居場所がないんです。天才なんて呼ばれてますけどいつも孤独なんです。」

少しの沈黙があった。

「わたしも先生に指名されて嬉しいです。二人で最高の恋愛小説を生み出しましょう。」

と未来は力強く言った。

「はい!」

と春馬は嬉しそうに答えた。

「どうだ?」

と打ち合わせを終えてオフィスに帰って来た未来に礼二が聞いた。

未来は少し恥ずかしそうに

「頑張ります!」

と答えた。


「そうか。」

とだけ言って礼二は自分の席に座って仕事を始めた。

隼は、仕事を休んでいた。

未来の、頭の中は礼二の事でいっぱいになった。

何故、こんなに礼二の事を考えてしまうんだろう?

いけない、礼二は妻子がある身なのだ。

密かに想っていようと未来は決めた。
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