プロローグ

文字数 252文字

 部屋の電気を点けるのさえ三ヵ月ぶりのような気がした。しばらく洗面台で生気のない男の顔とにらめっこをしてから髭を剃った。
 エアコンを切って窓を全開にすると、頭を出して空を仰いだ。
 白く眩しい日差しが部屋へと差し込む。冷たい空気が一気に肺へと流れ込んで、体が目を覚ましたかのように震えた。
「はあーー」
 肩を揺らし息を吐いくと、体に入った冷たい空気が白い息となって視界を曇らせた。
 オーディオ機器の電源を全て切って、うっすらと白く積もった埃を拭き取ってゆく。丁寧に、丁寧に。行き場のない想いを拭いとるように。
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