喫茶センチメンタル

文字数 4,416文字

腹が減った・・・

こりゃそーとーヤバいぜ、歩くのもキツイくらいだ

そりゃそうですよ、目覚めてからまだ何にも食べてません

機体のオーバーホールが完了するまでまだ少し時間があります。

どこか食べに行きましょう

その前にィ~、バップのガレージの冷蔵庫をあさってたらこんなもんがァ~
サンドイッチとサーモンベーグル・・・

盗んだんですか?

おいおい、人聞きが悪いなァ

割引が入ったとは言えオーバーホールに20万も出すんだ

このくらい貰っても大丈夫だろ

と、言うことでこれはオヤジからもらったんだ

はァ~全く、私はどうなっても知りませんからね
わかってるって、大丈夫だよ

あァ~食った食った

って、もう食べたんですか?!

人間の食欲とは、、、すごいものです。

実に興味深い、食欲についてもっと・・・

おい、そんなことより

どこか店入ろうぜ、暑くて死にそうだ

あ、はい

では、、えーっと、この道を300m進んだところに2件ほど飲食店がありますね。

1つは有名チェーン店のハンバーガーショップ、2店舗目は昔ながらのカフェ、ですね


ふ~ンそうか、まあどっちも近いんなら店の見た目で決めよう
~数分後~


とりあえず店の近くに到着しましたが・・・どちらにします?
ん~~、どっちも微妙だな・・・

ハンバーガーショップの方はまだできたばっかりといった感じでいいのだが、店の中は客でごった返していて落ち着いて食べ物が食えなさそうだ。

向かいのカフェの方はいかにもザ・老舗といった感じで外観が古めかしく看板の電気も切れかけていてあまり綺麗な感じではなさそうだ。

まあハンバーガーショップと比べれば客も少なそうだし、外観で店の雰囲気を決めてしまうのも悪いしな

では、カフェに行きますか?
うん、そうだなカフェで決まりだ。

ほう、喫茶センチメンタルかいい名前だ

店のマスターにいい話が聞けそうだな

特にワケアリのな

人のデリケートな部分を知らぬ間に刺激していて怒らせるとかやめてくださいね。

人とのコミュニケーションは意外と難しいんですから

人工知能に言われても説得力ゼロだぜ

まあ社会勉強よ、社会勉強

とにかく入ろうぜ

・・・、はい
店には客が2、3人くらいで、酒やナポリタンを食べていた。

店内はシックな雰囲気で外観とはまたガラッと変わってかなりおしゃれである。

そして一番目を引くのは店のカウンターの奥にドスンと置いてあるレコードプレイヤー。

そこからは店のbgmとして俺好みのジャズが流れいてた。

カッコつけて口笛を吹きたくなる、どうやら入った店は当たりだったようだ。




いいじゃん、この店
すると店の店員か、同年代くらいの可愛らしい小柄な女性がこちらに近づいてきた
あ、あの、いらっしゃいませ

お好きな席にどうぞ

あ、どうも

いい店ですね

ありがとうございます!!

古い店ですが、ごゆっくり

さっきの一言が嬉しかったのか店員は満面の笑顔でそういうと店のカウンターの奥に戻っていった
ますますこの店気に入ったぜ

テーブル席に座っちまったがカウンター席に座ればよかったな

あの女性がそんなに気に入りましたか?
まあ、美人だったしな

せっかくだからゆっくりしていこう


ですね
すると入り口の扉がドンッと勢いよく開いた
お~~~い、ねぇちゃんビールを一杯頼む
あ、は、はいっ
(ガラの悪い客だ、雰囲気だけは壊さないでくれよ)
おい、ちょっと聞きたいことがあるんだ

こっちに来てくれよ

かしこまりました
(アイツ変なことしねぇだろうな・・・)
なァ?知ってるか?

この世界には色んな奴がいる、金持ちのやつもいれば貧乏な奴もな


は、はァ
頭のいい奴、バカな奴

優しい奴、意地悪な奴

それに手っ取り早く金を稼ぎたいやつもなァ!!!

キャァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!
いきなり店に入ってきたガラの悪い客は謎のセリフを言い放つと女店員の腕をつかみ銃を頭に押し付けた
頭ぶち抜かれたくなけりゃレジに入っている金全部持ってきな
それに、、、
銃を天井に向けてバンバンと2発、威嚇しているのだろう
関係ない客は全員出ていきな!!!

出ていかなきゃぶっ殺すぞ!!!

あいにく俺以外の客は全員女だったためキャーと叫びながら外に逃げていった
(お~いおい、勘弁してくれよ。しかもアイツ、客を人質にするのではなく逃がしてしまうなんてな、警察に通報されたら終わりだぜ。きっとこういう金の稼ぎ方は初めてなんだろ、おまけにバカだ)
めんどくさいことに巻き込まれるのはごめんです。

早く逃げましょう

嫌だね、せっかく見つけたいい店だ。

ここで帰るなんてもったいないぜ、まだメニューすら見てないんだ

それに店員はゆっくりしていけって言ってたしな。

今の状況を考えてください!!!

早く!!

おい!!そこのガキ!!!シカトこいてんじゃねぇぞゴラァ!!!
あ~~~~、もうっ!!!
まァ~任せろって
兄さんよォ、さっきからバンバンうるせぇんだよ

まだこっちはメニュー見てる途中だぜ?

あとお姉さん、目を瞑っていれば終わっているさ

は、はいっ


おい、マジかよ

アハハハハッツ、コイツバカだぜ!!この状況全く理解できてねぇみたいだww

姉ちゃんちょっと待ってろよ、あのガキボコしてくるからよ

その間に金用意しておきな


フゥ~!いいねぇ!!そんなに自信があるならかかって来いよ!!

まあ、怪我しても知らねぇけどな

ok、ok~

こっちは銃を持っていること忘れてねぇよな?

バキュンッ!!!
おいおい、手が震えて全く俺にあたってないぜ?


お、お前っ

妙に落ち着いてんなっ

はっ、はっ

さっきの威勢はどこに行ったんだ?

まだ銃の使い方もしらねぇみたいだな、ルーキー!この仕事をやるには

早かったんじゃねーか?

お、お前ぇぇぇ!!!!!!

人を馬鹿にするのもいい加減にしろよォォお!!!!

バンッ、バンッ!!
無作為に乱射するのもいいが、誰もが普通な客とは思うなよ

俺も持ってるんだぜ、銃

な、なにっ?!

うわぁぁ!!!!

おっと悪いィ~

俺も使い始めたばかりのルーキーでな、手が滑って足をぶち抜いちまった。

乱暴な弾だな。

注意しておくぜ

ヒッ!!!

く、来るなァ!!

撃つぞ!!!女を撃つぞォ!!!

カスッ、カスッ、カスッ
弾切れかよ、残念だったな

運がないと思って諦めな

クッソ、これじゃあ兄貴に怒られちまう!!!

うおォォォォォ!!!

おいマジかよwwパシリでこんなことさせられてるのかよww

さっきから思ってたけどホントにお前って安い男だぜっ!!!

アゼルは男のパンチをするりと流れるようにかわし、顔面にパンチを一発くれてやった
お、お前っ

何もんだ?!

俺はただの旅人さっ、それよりお前のせいでいい感じの店が台無しだ

しっかりその分は落とし前つけてもらうぜ

これは台無しにされた店の分!!
グハッ
そして店員さんの分ッ!!
ブファッ!!
そして最後にっ!俺の分だぁぁ!!!!
グハァァァァァァァァァ~~!!!!!!!


二度と来んじゃねぇ!!!!
ヒッ、ひぇぇぇェェぇええええええ!!!!!!!!


ことが終るとアゼルは目をギュッと瞑ってぶるぶると震えている女店員に駆け寄った
大丈夫か?うるさいお客はもう帰ったぜ
あっ、ホントだ

それにホントに目を瞑っていれば一瞬で終わってた

そしてありがとう、助けてくれて

もしあなたがいなかったら・・・

いいんだ、それにアイツ雑魚中の雑魚だったからな

だけどごめんな、店を少し荒らしてしまった

窓や電球が割れ暗くなった店内にはレコードプレイヤーからジャズが静かに流れ始める
俺好きだぜ、この曲
この曲ね、お父さんが好きだった曲なの


好き、だった?
1か月前にね、お父さん死んだの
私の家はもともと貧乏で、この喫茶店だけが唯一の収入源だったんだけどとうとう精神的に限界が来たみたいでね、最後はギャンブルに溺れて死んだわ
そうかのか・・・
そう、だから今は私が一人で切り盛りしているの。

さっきのお礼でコーヒー一杯どう?


ああ、もらうよ
あともう少しでなくなっちゃうの、うちのオリジナルブレンド
なぜ?
これはね、お父さんしか知らないブレンドなの

最後まで作り方は教えてくれなかったからね。

どうしようもない父だったけど、なんかこのコーヒーは好きなのよね

じゃあ、そのコーヒーをもう一杯
えっ?
これはお姉さん分
ふふっ、奢るつもりだったのに奢られちゃったわ

ありがとう

ああ、それより名前は?
チサト・ヤマダ よろしくね

あなたは?

チサトか

俺はアゼルだ、よろしく

へえ~、カッコいいのね

はい、コーヒー


どうも、

苦いけど、なんか美味い

色んな思いが詰まってそうだな

そうね、いい思い出も辛かった思い出もコミコミよ

そういえばさっき旅人って言ってたけどずいぶん若いのね

ああ、俺は二日前に目覚めたばかりの親もいなけりゃ家もないたった1人の旅人さ。

あるのは相棒の空飛ぶマシンだけ。現在修理中だがな

なんかすごい!

おとぎ話の主人公みたいね!!

あてのない旅ってなんか素敵

世界がどれだけ広いのか確かめられるしね

そんないいもんじゃないさ、金もないしな

世界は広いのか・・・そんな広かったら記憶を戻す鍵みたいなもんを一生見つけられないまま死んでいくかもしれないな・・・

記憶喪失ってどんな感じかよくわからないけど私は羨ましいな
ん?なんでだよ
私はいい思い出はあんまりないから、人生の半分以上が嫌な思い出

お金がないだけで生きていくのがどんなにつらいか・・・

だからまっさらな人生をこれから始められるのっていいなって

それに私は生まれた時からずっとここ、旅行に行くお金もないから。

世界がどんなのか、どれだけ広いのか、いつか見てみるのが私の夢なの。

この狭い世界から、少しでも広いところへ、行ってみたいの

じゃあ、俺が連れて行ってやるよ

世界がどんだけ広いのか、一緒に見に行こう

えっ?!本当に!!!
約束だ

今度スペースレースに出て金を作るんだ

金が無けりゃ旅もできねぇからな

それが終ったら君を迎えに来るよ

じゃあ、私待ってる!!!

時間、かかっていいから絶対に迎えに来てね

でも、ただ見に行くだけじゃあつまらないから、ついでに俺とデートしてくれよ

俺は運がいいんだ。このコインを投げて表だったらデートな

運もものにするのが俺なんだ


フフッ、いいわよ
ピィ~~ンとコインを飛ばし、手の甲でキャッチした
ラッキー、表だ
あら、でもそれどっちも表よね?

バレバレよw

アハハ、お見通しか

やられたよ、で、デートはなし?

無しじゃないわ、楽しみにしてるね、デート!!
そうこなくっちゃ!!


アゼル様、お話し中失礼しますがジェリコのオーバーホールが完了したとバップから連絡が入りました。
それじゃあ今日はこのくらいで失礼するよ

マシンのオーバーホールが終ったみたいだ。

あと、これ俺の連絡先。なにかあったらいつでも連絡okだから


ありがとう!!!

私待ってるから、約束

ああ、必ず迎えに行く

コーヒーご馳走様


店を出る前にアゼルはスマートデバイスで一枚チサトの写真を撮っていった
アゼル様、自信満々でしたね
う、うるせぇよ!!!!!
ん?体温があがりましたね、特に頭部が

もしかして照れてます?

細かい分析もいいわぁ!!!
つづく・・・
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登場人物紹介

アゼル 18歳

記憶が無い少年 自分を知るために長いあてのない旅に出る。相棒のジェリコと共に

Jericho(ジェリコ)

アゼルの相棒の改造型超高速戦闘機

中には自我を持つ人工知能ジェリコが搭載されている。

機体と人工知能の名前は同じ

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