一文小説集「薬指」等五篇

文字数 228文字

【薬指】

 不倫相手の胸のタッチパネルに、左手の薬指で触れたら、不倫相手が誤作動を起こした。



【日傘】

 日傘にぽたりと太陽の涙が落ちた。



【治療】

 治療のかいあって、一日一回、血とともに口から吐き出されるおみくじが、「吉」から「中吉」になってきた。



【バス】

 そのバスは、心臓の数が残り一つになってしまった人たちを乗せて、楽園へ出発した。



【軽トラ】

 夕方、「今夜の月を食べないでください」とスピーカーから流しながら走っている軽トラの運転手の背中に、羽が生えている。
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