東京ローズ

文字数 1,030文字

戦後の76年を経た今、そしてこの6月という季節に於いて、
様々な出来事が回想されます。
今の、この21世紀でまさか、このような世界を驚かす戦争が起こるなど
考えもしませんでした。
それはウクライナに侵攻したロシアによる侵略戦争のことです。
しかし、今はそのことではなく、かつての日本の戦後について考えてみます。

戦争の残したものとは。
太平洋戦争では、悲惨で忘れられない日本の敗北という結果になった。
紆余曲折を経て、その結果、アメリカの統治という経過を経て、
今や、世界的に経済的繁栄をもたらす近代国家になった日本である。

その当時の中で、激しく国家という意識を持ちながら、
その意識の強さ故に誤解され、中傷され、
自分の意志と反対に国賊と言われた多くの人達がいる。
その中でも「東京ローズ」と呼ばれた女性を思わずにはいられない。

第二次大戦中に、日本のアメリカ向けラジオ放送で、
アメリカ兵士に英語で語りかけるのだが、
その手法はプロパガンダと呼ばれ、戦意を喪失させる目的で、
甘い声で彼等を魅了したアメリカ生まれの日本女性アナウンサーである。

彼女は、頼まれて一時的に親類の見舞いに来たとき戦争になり、
アメリカに帰れず、そのまま生活の為に日本でアナウンサーになった。
その中でも、米国籍を放棄するように言われても拒否した女性だった。

その魅力ある声を買われ、
やがて米国内では有名な「東京ローズ」として有名になる。
(しかし、東京ローズは彼女だけでないが、その国籍からそう言われている)

アメリカの若い兵士達は、
その美声に惹かれ、ラジオの周波数を合わせて聞いていた。
彼女は意に反し、いわゆるアメリカの敵として働いていたのである。

戦後、アメリカに帰国し、そのことで訴追され裁判となり
禁錮10年と罰金1万ドルという過酷な判決を受けるが、
後にフォード大統領による恩赦を受けることになる。

しかし、彼女はそれらのことで、全てに於いて言い訳をせず、
アメリカ人としての誇りを捨てず、
人を憎まず頑固に意志を貫いたという女性だった。

このように両親の母国である日本と、生まれた米国に運命を翻弄された
悲劇の人であり、そのことを思うとき、人の運命という意味を改めて思う。

当時、日本が戦争に加わったために、米国で移民として働いていた人たちは
収容所に集められ、そこには虐げられた多くの日本人がいた。

彼等の異国での扱いは想像を超える悲惨なことであり、
それを思うと胸が痛む。
そのことを山崎豊子さんの小説「二つの祖国」でも書いてある。



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