突然の変身

文字数 775文字

 俺の名は小暮、刑事だ。
これから話すのは、とんでもない上司と言うか先輩の話だ。変わり者とは良く言うが。
 彼程、変わった男はいない。
いや、意味が違うのだが・・・。

 俺は、とある都市で警察に勤める刑事だ。
俺の先輩は変わり者だ。
いや、元々は普通の平凡な、むしろ没個性的な平均的な公務員的な、いやいや兎に角、普通の警部補だった。
 俺は新人の頃より彼に世話になり。
刑事のいろはを教わったのだ。
とても感謝している。尊敬もしている。

 だが、ある日を境に彼は変わった。
まさに変身した。以前の七三か八二分けで、
綺麗に油を塗って、ツヤツヤした髪だったのだが。今、車の中で俺の隣に座っている彼は、
ボサボサの天然パーマの様な髪型になっていた。元々、目が細かったがメガネを掛けていたので。特に気にもしなかったが。
彼はメガネを外し、その獣の様な目付きで、
含み笑いをしながら張り込みをしているのだ。

 彼の名は、遠藤警部補。
こんなハードボイルド刑事ではなかったのに。
 それは、いつの事だろう。2週間程前だったと思う。珍しく彼が奥さんからの連絡で3日程仕事を休んだ後だった。
彼が刑事部屋に現れた時、誰も何処の誰が来たのか分からず。何か御用ですか?と聞いた程だった。
彼は禁煙の刑事部屋でタバコに火を点けると、

「何言ってんだぁ、テメェ〜、寝惚けているのか?俺だよ、遠藤だ」

とタバコの煙を吐きかけたのだ。
部屋が凍り付いた瞬間だった。同僚の刑事が、

「どうしたんです?遠藤さん!」

と聞くと。遠藤さんは、いつも通りだと言ったのだ。どこが〜!いつも通りなのだ?!
我々は、彼が頭がおかしくなったと思った。
 後で分かったのだが、刑事部長の話では。
奥方様が仰有るには。ある日、明け方に帰ってきた遠藤さんが、様子がおかしいので病院に連れて行って。精密検査を受けさせたのだが。
何の異常も無かったとの事である。

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