源義経黄金伝説第2話
文字数 1,464文字
源義経黄金伝説■第2回 1180年(治承4年)四国白峰。西行法師が、北面の武士佐藤 義清の折、仕えた崇徳上皇の塚に額き、崇徳上皇を奉ずる約束。崇徳上皇の霊は日本を祟っている。
源義経黄金伝説■第2回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所
明治元年(1868年)よりさかのぼる事、690年前
1180年(治承4年)四国白峰。
老僧が荒れ果てた神社の鳥居の前に佇んでいる。鳥居から見える四国瀬戸の荒海はひゅひゅうと音を立てて荒れすさんでいる。
「ようやく参りましたぞ、崇徳上皇様、しかし、この荒れよう、いかにかなら
ぬものか。上皇様、上皇様、どうかお姿をお見せくださいませ。西行が、佐藤義清が参りましたぞ」
西行は大声で叫んでいる。ここは四国の山中である。が、社殿は静まり返っている。その静けさが、何とも恐ろしい。
「いかがなされました。何かご不満がおありになられるのか」
「ふ……」
どこからともなく、うめき声が、あたりの静寂を破る。
突然、風が強くなってくる。空が急激に曇り始め、やがてポツリと西行の頬を雨脚が濡らした。
「遅いわ、西行よ。朕を、何年待たせるのじゃ。さような奴輩が多いがゆえ、
京都に災いの種を、いろいろ蒔いてやったわ。
四つの宮、後白河もいやいや腰をあげたであろう。俺が恐ろしいはずじゃ。
う、悔しや。もっとあやつ、、、、後白河法皇を苦しめてやるぞ」その声は恨みに満ち満ちている。
「崇徳上皇様、お待ちくだされい。民には、何の咎もございませぬ。どうか、他の
人々に災いを与えるのはお止めくだされい」
「ふふう、何を言う。日本の民が苦しめば、あやつも苦しむ。もっともっと苦しめばよい。俺の恨みはいかでも晴れぬは」
「お聞きください、崇徳上皇様。では上皇様のための都を新たに作るという策は、いかがでございますか」
声が急に途切れる。
「何、西行よ、お前、何かたくらんでおるのか。いやいや、お主は策士じゃ。
何かよからぬことをたくらんでいるに違いない」
意を決して、西行が顔をあげた。
「崇徳上皇様、奥州でございます」
「何、あの国奥州に」
「そうでございます。この国の第二の都を
何、あの国奥州に」崇徳上皇が、西行に尋ねる。
「そうでございます。この国の第二の都を。それならば唐国にも前例がございましょう」
「何、平泉を、第二の京に。そして朕を祭ると、、そういうことか、西行よ」
「さようでございます」
西行法師は、顔を紅潮させていた。
「西行、たばかるでないぞ。わかったぞ。朕は、少しばかり様子をみる事とし
ょう。がしかし、再度謀れば、未来永劫、朕はこの国に、祟るぞ」
風雨は、急に止み、天に太陽が姿を現す。汗がしたたり落ちている西行の顔
は、まぶたが閉ざされている。体が瘧のようにぶるぶると震えている。腰は、地に落ちている。
「これでよろしゅうございますか、兄君、崇徳上皇様に告げましたぞ。後白河法皇様。はてさて、しかしながら、恐ろしい約束事を…。この私が西行が、佐藤義清が、いかにしてか、平泉を第二の京にしなければなりませぬなあ…」
ひとりごちている西行は、心中穏やかではない。
西行は四国白峰にある崇徳上皇の塚にいる。
崇徳上皇は「保元の乱」で破れ、弟、後白河上皇に流されたのだ。
それゆえに弟、後白河上皇を憎みきっているのだ。そしてその配下も。
東北の平泉は、源平どちらにも属さず、第3勢力の仏教王国として、産金王国として栄えている。
その昔
西行法師、佐藤義清は、北面の武士として仕えていたのだ。
平の清盛の同僚のモノノフとして。
(続く)20200701改訂
続く
源義経黄金伝説■第2回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・Manga Agency山田企画事務所
明治元年(1868年)よりさかのぼる事、690年前
1180年(治承4年)四国白峰。
老僧が荒れ果てた神社の鳥居の前に佇んでいる。鳥居から見える四国瀬戸の荒海はひゅひゅうと音を立てて荒れすさんでいる。
「ようやく参りましたぞ、崇徳上皇様、しかし、この荒れよう、いかにかなら
ぬものか。上皇様、上皇様、どうかお姿をお見せくださいませ。西行が、佐藤義清が参りましたぞ」
西行は大声で叫んでいる。ここは四国の山中である。が、社殿は静まり返っている。その静けさが、何とも恐ろしい。
「いかがなされました。何かご不満がおありになられるのか」
「ふ……」
どこからともなく、うめき声が、あたりの静寂を破る。
突然、風が強くなってくる。空が急激に曇り始め、やがてポツリと西行の頬を雨脚が濡らした。
「遅いわ、西行よ。朕を、何年待たせるのじゃ。さような奴輩が多いがゆえ、
京都に災いの種を、いろいろ蒔いてやったわ。
四つの宮、後白河もいやいや腰をあげたであろう。俺が恐ろしいはずじゃ。
う、悔しや。もっとあやつ、、、、後白河法皇を苦しめてやるぞ」その声は恨みに満ち満ちている。
「崇徳上皇様、お待ちくだされい。民には、何の咎もございませぬ。どうか、他の
人々に災いを与えるのはお止めくだされい」
「ふふう、何を言う。日本の民が苦しめば、あやつも苦しむ。もっともっと苦しめばよい。俺の恨みはいかでも晴れぬは」
「お聞きください、崇徳上皇様。では上皇様のための都を新たに作るという策は、いかがでございますか」
声が急に途切れる。
「何、西行よ、お前、何かたくらんでおるのか。いやいや、お主は策士じゃ。
何かよからぬことをたくらんでいるに違いない」
意を決して、西行が顔をあげた。
「崇徳上皇様、奥州でございます」
「何、あの国奥州に」
「そうでございます。この国の第二の都を
何、あの国奥州に」崇徳上皇が、西行に尋ねる。
「そうでございます。この国の第二の都を。それならば唐国にも前例がございましょう」
「何、平泉を、第二の京に。そして朕を祭ると、、そういうことか、西行よ」
「さようでございます」
西行法師は、顔を紅潮させていた。
「西行、たばかるでないぞ。わかったぞ。朕は、少しばかり様子をみる事とし
ょう。がしかし、再度謀れば、未来永劫、朕はこの国に、祟るぞ」
風雨は、急に止み、天に太陽が姿を現す。汗がしたたり落ちている西行の顔
は、まぶたが閉ざされている。体が瘧のようにぶるぶると震えている。腰は、地に落ちている。
「これでよろしゅうございますか、兄君、崇徳上皇様に告げましたぞ。後白河法皇様。はてさて、しかしながら、恐ろしい約束事を…。この私が西行が、佐藤義清が、いかにしてか、平泉を第二の京にしなければなりませぬなあ…」
ひとりごちている西行は、心中穏やかではない。
西行は四国白峰にある崇徳上皇の塚にいる。
崇徳上皇は「保元の乱」で破れ、弟、後白河上皇に流されたのだ。
それゆえに弟、後白河上皇を憎みきっているのだ。そしてその配下も。
東北の平泉は、源平どちらにも属さず、第3勢力の仏教王国として、産金王国として栄えている。
その昔
西行法師、佐藤義清は、北面の武士として仕えていたのだ。
平の清盛の同僚のモノノフとして。
(続く)20200701改訂
続く