第7話

文字数 1,543文字

 八千と睦美の2人は小学校入る前から、ううん……今の話を聞けば生まれる前からバレーに携わっていたけれど、私だけ2人より始めたのが遅い。

 あれは小学校2年生の球技大会。私たちの小学校は変わっていて、各学年の優勝チームがトーナメント方式で『学校一位』を決める。
 当然学年が上の方が有利で6年生が強い。

 しかし準決勝は2年生対4年生。

 2年2組の八千は姉・三咲のいる4年1組に勝って、そのまま6年生も下し優勝した。
 その後、八千のいるクラスは卒業まで負けたことがない。その競技は『ドッヂボール』。

 彼女はどんな球でさえもレシーブして、仲間がそれをノーバウンドキャッチ。彼女はリベロへの道を踏み出すこととなったそうな。このとき八千に負けた三咲が悔しさから始めたバレーボール。
 私は姉がバレーをやったから始めただけである。そう言えば私も大したきっかけではない。
 物事の始まりは大義名分なんて要らない。必要なのは『今』それに『向き合う気持ち』である。

 そうだそうだ、大切なのは『現在』なんです。


 柏手高校が全国大会へと出場するために倒すべき学校の一つが三咲(あね)のいる平安学園である。


 そのためには先ずはレギュラー争いだ……。私はインハイでベンチ入りできなかった……基本各ポジションの二番手が控えとしてベンチに入る、つまりは私は3年生たちがいた段階でセッターとして3番手以降の選手と言うわけだ。

 今年ベンチ入りしていた2番手のセッター……2年生の五和先輩が現時点で正セッターに一番近い。



「なんでバレーをやってるか、ですかぁ……」

 ん? なんか私の質問と微妙に変わったような……バレーを始めた理由からバレーをやる理由……難易度上がってません?
 いつものスマイルスルーの表情を作りながら考慮時間を稼ぐ。

「バレーってアクティブディフェンス(積極防衛)なんですよねぇ。もちろん点取れば勝ちだけど、守れなきゃ負け……って言うのも他のスポーツと同じですか……でも上手く言えないですけど『落としたら負け』だからみんなで協力して拾い上げる、そこが良いって言いますか……」
「分かるそれ、ゴールとか特別な何かを守るんじゃなくって、ネットのこっち側全部、6人が立ってる自陣全部をその6人で守る連帯感。みんなで守って落とさず攻撃に繋げる一体感」

「バレーってぇ~『にらめっこ』と同じだもんねぇ~」

 睦美の言葉が私を過去へと連れて行った。



//////ミニ解説コーナー//////

睦美  「リベロって~難しいの?」
八千  「基本後衛のミドルブロッカーがサーブを打った後交代して、その選
    手が前衛にローテーションするときに交代するって感じかな(何度で
    も交代できる。リベロが試合から退出するときは、入るときに交代し
    た選手と交代しなければならない)」
睦美  「でも後衛と前衛が変わったなら~、その対角に居るミドルブロッカ
    ーの人がすぐ後衛に来るんじゃな~い?」
菜々巳 「そうなの、だからリベロは大変! ただリベロはサーブを打てない
    から、MBがサーブポジションに居てサイドアウトしない限り出番はお
    預けね」
睦美  「サッカーにもリベロって無かったっけ~?」
菜々巳 「『自由』って意味のイタリア語。サッカーでは守備的ポジションなが
    ら、それに縛られない役割。バレーではほぼ攻撃不能、守備特化です」
八千  「1打目をセッターが触った場合の2打目を任されるのが女子の場合、
    レベロが多いわね」
睦美  「なんで~?」
菜々巳 「その方が攻撃に幅が出るからよ。例えばセッターが1打目、OHが2
    打目なら、3打目には2打目に触った選手は攻撃に参加できないので、
    相手側の選択肢を楽にさせてしまうからよ」
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