文字数 316文字

 彼の温もりを感じたいと思った時、彼に飼われている猫になれたらと思った。彼の肩に乗って、自分の頭を彼の首筋に擦り付けたら、彼は大きな温かな手で私を撫でてくれる。私がさらに甘えると、私を両腕で抱いて、頬を寄せてくれる。そのあと頭や体を優しく撫でて、それがとても温かくて気持ちがよいのだ。
 なぜだろう。私は彼に恋するまで、恋の相手に対してそのような想像をしたことがない。相手とのふれあいを空想する場合は、人間どうしの単なる情事を思い浮かべるだけだった。なのに彼に対しては、人間の性欲的な気持ちだけではないようである。私は、彼が人間には見せない表情や仕草、彼の心が作るあらゆるものを感じたいのだろう。きっと、彼のすべてを知りたいのだ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み