いち! KENTはケンケンでお兄ちゃんの友だち③
文字数 1,953文字
動画そのものの、明らかにフェイクって丸わかりのショボさと、コメント欄のガチさのギャップが話題になってバズったんだと思う。コメント欄はどんどん気持ち悪くなる。野次馬もガンガン増える。悪夢みたいな祭り。これはウチもリアタイで見たよ、狭い界隈でだけれど、ちょっと話題になったからね。ゲラゲラ笑いながら見てた。「やっばー!」ってね。お兄ちゃんが関わっていたなんて全然知らなかったから。
でもこのあたりで怖くなって「KENT」ことケンケン君はアカウントごと動画を削除した。お兄ちゃんもケンケン君にそれをすすめた。幸いその後は何もなく過ごせているみたいだけれど。何もなくて済んだのはケンケン君がネットに個人情報を公開していなかったからかもってお兄ちゃんが言ってた。顔出しをしていなかったのは特に大きいと思う。
そうやって安心してたらさ、ちょっと前に出たんだよね。「皆は『ユートピア郷団』を覚えているか?」って、ケンケン君とお兄ちゃんが作った動画を引っ張り出してきて、その考察を動画にした人が。名前は「ネット伝説考察部」とかいったかな。ん、ネーミングセンスがダサい。この人もまたKENTみたいな弱小配信者だった。「KENT氏と連絡が取れないので無断借用となりますがご容赦ください。もしKENT氏がこの動画をご覧になって、何か問題がありましたらご連絡ください」って但し書きを付けてた。ちなみにユートピア郷団をエコビレッジと言ったのはその人。お兄ちゃんの作ったウェブサイトの粗をさがして「間違いなくフェイク、ユートピア郷団は存在しない」「なのになぜ? 自作自演か?」「それにしては」って、みんなが分かりきっていることを繰り返すような内容の動画だった。これ、お兄ちゃんとしては結構辛いというか、恥ずかしかったみたいだよ。
そうしたらその動画にもコメントが付いたわけよ。郷団関係者を名乗るアカウントから、やっぱりうじゃうじゃと。「フェイクではありませんよ。KENTさんは正しい情報を発信しています」……なんてね。それに対してその人が、SNSで「何これ怖い」「KENT氏に起こったことが自分にも起こっているようです」「ちょっと耐えられない」って呟いたのが拡散されて、そこにさらに人が集まったんだ。もう野次馬だらけ。悪夢の祭りふたたび。最終的にはその人も自分のアカウントを削除して、多分逃げた。お兄ちゃんたちと同じように怖くなったんだと思うよ。SNSのアカウントも一緒に消えたっていうし。
でも、ここからの動きがお兄ちゃんの時と違うの。この騒動に集まって、一部始終を見ていたみんなは考えた。
「
気づいちゃったらさあ大変。またまた祭りが始まった。「郷団」の下の二匹目、三匹目のドジョウを狙って動画を投下する奴らが一人、また一人と現れて、狙い通りに動画をバズらせていったの。動画の内容は、お兄ちゃんたちの動画の紹介だったり、「皆は『ユートピア郷団』を覚えているか?」の説明だったり、あるいは完全なオリジナルだったり。どの動画にも、もれなく関係者からのコメントがガンガンついた。この動画を作ればどうなるか、みんなわかってやっているから、最初のうちは「ほらほら釣れた!」って余裕のムーブなんだけれど、しばらくすると怖くなって逃げる。それがテンプレになった。
逃げるっていうのも「とりあえずこの動画だけを消す」っていうのを試してみた人がいた。でもそれはダメだった。その人が作った別の動画に書きこみがあったり、またはSNSの呟きにレスポンスがあったりで。とにかく何もかもをネットから消さないことには落ち着かない、逃げ切れないってことが分かったんだ。それでも郷団動画を作ろうって人が後を絶たない。アカウント生命と引き換えにバズりを狙う。たけのこみたく、ニョッキニョッキ。これが「ユートピア郷団」を巡る今の状況。それでウチも気になって、なんならちょっと触ってみたくなって、お兄ちゃんに聞いたわけよ。「このネタ知ってる? どう思う?」って。そうしたらお兄ちゃんがまさかの当事者だった、ってわけ!
お兄ちゃんはこう言う。
「バズればいいってわけじゃないぜ。あのネタは承認欲求とかそんな理由で触るもんじゃない。アレに関わった怖さは、実際に経験してみないとわかんねえよ」
へいへーい。そうですねー。でも何だよその発言、賢者かよ。上から目線で腹立つねー。経緯はどうあれ一度でもバズった経験がある人は言うことが違いますね……っと。
自分の兄なのに、いや兄だからか? ムカツクわー、いけ好かないわー。ホント。ねぇ?
でもこのあたりで怖くなって「KENT」ことケンケン君はアカウントごと動画を削除した。お兄ちゃんもケンケン君にそれをすすめた。幸いその後は何もなく過ごせているみたいだけれど。何もなくて済んだのはケンケン君がネットに個人情報を公開していなかったからかもってお兄ちゃんが言ってた。顔出しをしていなかったのは特に大きいと思う。
そうやって安心してたらさ、ちょっと前に出たんだよね。「皆は『ユートピア郷団』を覚えているか?」って、ケンケン君とお兄ちゃんが作った動画を引っ張り出してきて、その考察を動画にした人が。名前は「ネット伝説考察部」とかいったかな。ん、ネーミングセンスがダサい。この人もまたKENTみたいな弱小配信者だった。「KENT氏と連絡が取れないので無断借用となりますがご容赦ください。もしKENT氏がこの動画をご覧になって、何か問題がありましたらご連絡ください」って但し書きを付けてた。ちなみにユートピア郷団をエコビレッジと言ったのはその人。お兄ちゃんの作ったウェブサイトの粗をさがして「間違いなくフェイク、ユートピア郷団は存在しない」「なのになぜ? 自作自演か?」「それにしては」って、みんなが分かりきっていることを繰り返すような内容の動画だった。これ、お兄ちゃんとしては結構辛いというか、恥ずかしかったみたいだよ。
そうしたらその動画にもコメントが付いたわけよ。郷団関係者を名乗るアカウントから、やっぱりうじゃうじゃと。「フェイクではありませんよ。KENTさんは正しい情報を発信しています」……なんてね。それに対してその人が、SNSで「何これ怖い」「KENT氏に起こったことが自分にも起こっているようです」「ちょっと耐えられない」って呟いたのが拡散されて、そこにさらに人が集まったんだ。もう野次馬だらけ。悪夢の祭りふたたび。最終的にはその人も自分のアカウントを削除して、多分逃げた。お兄ちゃんたちと同じように怖くなったんだと思うよ。SNSのアカウントも一緒に消えたっていうし。
でも、ここからの動きがお兄ちゃんの時と違うの。この騒動に集まって、一部始終を見ていたみんなは考えた。
「
ネットで『ユートピア郷団』のネタを出すと、その配信者が有名かどうかは関わりなく『関係者』が現れるのではないか? この祭りは再現可能なんじゃないか?
」気づいちゃったらさあ大変。またまた祭りが始まった。「郷団」の下の二匹目、三匹目のドジョウを狙って動画を投下する奴らが一人、また一人と現れて、狙い通りに動画をバズらせていったの。動画の内容は、お兄ちゃんたちの動画の紹介だったり、「皆は『ユートピア郷団』を覚えているか?」の説明だったり、あるいは完全なオリジナルだったり。どの動画にも、もれなく関係者からのコメントがガンガンついた。この動画を作ればどうなるか、みんなわかってやっているから、最初のうちは「ほらほら釣れた!」って余裕のムーブなんだけれど、しばらくすると怖くなって逃げる。それがテンプレになった。
逃げるっていうのも「とりあえずこの動画だけを消す」っていうのを試してみた人がいた。でもそれはダメだった。その人が作った別の動画に書きこみがあったり、またはSNSの呟きにレスポンスがあったりで。とにかく何もかもをネットから消さないことには落ち着かない、逃げ切れないってことが分かったんだ。それでも郷団動画を作ろうって人が後を絶たない。アカウント生命と引き換えにバズりを狙う。たけのこみたく、ニョッキニョッキ。これが「ユートピア郷団」を巡る今の状況。それでウチも気になって、なんならちょっと触ってみたくなって、お兄ちゃんに聞いたわけよ。「このネタ知ってる? どう思う?」って。そうしたらお兄ちゃんがまさかの当事者だった、ってわけ!
お兄ちゃんはこう言う。
「バズればいいってわけじゃないぜ。あのネタは承認欲求とかそんな理由で触るもんじゃない。アレに関わった怖さは、実際に経験してみないとわかんねえよ」
へいへーい。そうですねー。でも何だよその発言、賢者かよ。上から目線で腹立つねー。経緯はどうあれ一度でもバズった経験がある人は言うことが違いますね……っと。
自分の兄なのに、いや兄だからか? ムカツクわー、いけ好かないわー。ホント。ねぇ?