なんなら、お前も

文字数 894文字

……ってか、マジなのか、これ!?
マジ、マジ。サインだってあるだろ?
見れば、権利書の一番下には優美な筆致で「高瀬瑠々菜」とある。
す……凄ぇ……一体どうやってこんな……
売ってやろうか?
うっ……売るぅ!? いくらで!?
そうだな、お友達価格で……百円ってとこかな。
は? 百円?
素直で騙されやすい圭一も、さすがにこれにはおかしいと気がついた。
アハハハハ! 一瞬でも本物だと思ったのかよ?
なんだよ、偽物なのかよ! サインもお前が自分で書いたのか?
ああ。
ケロリとした顔で答え、意次が権利書を取り返す。
ちぇっ……下らない。驚いて損した。
悔し紛れを呟く圭一に、しかし、返ってきたのは意外にも不敵な口調の言葉だった。
……そう思うか?
だってそうだろ? 実際にエッチできないものに価値なんかあるかよ
そうでもないさ。月の土地の販売ってあるだろ?
あれだって、実際には住めもしない土地の権利を売りますっていうビジネスだ。繁盛してるってよ。今じゃ火星とか金星のも扱っているとか……俺はそれにヒントを得たんだ。
はあ?
ロマンだよ! 偽物でも、実際に使えなくてもいいのさ!
想像してみろよ、この権利書をこう、ポケットに入れているだけで……なんか凄ぇワクワクしてくるだろ!
目を輝かせて力説するその様はまさしくスケベ大魔神の真骨頂。

呆れる圭一。
お前……
しかし、ふと、「コイツの言うことももっともかもしれない」という思いがよぎった。
高瀬瑠々菜とHをする権利――そんな紙が自分の胸ポケットに入っていたらと考える。
(確かに、そりゃあ馬鹿馬鹿しいとは思うけれど……なんか、トキメク感じはする……か)
(ウキウキして一日が過ごせる……そんな魅力も、まあ……なくはないか?)
いや、間違いない。

再び脳裏に先ほどの妄想が甦る。
……。
ふあっ……!
……!
クラスで一番の美少女に、あんなことや、こんなことをして貰える権利――たとえ妄想にすぎないにしても、その妄想が権利書の形をとっただけで、妙に迫力といやらしさを増すではないか。

下らないかもしれないが、これは確かにロマンだ!
お前……
天才だな!
だっろお~!
なんなら、お前も作れよ、白紙のヤツならタダでやるよ!
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登場人物紹介

望月美卯(もちづき・みう)

圭一の幼馴染の少女。気が強くハキハキした性格だが真面目で性的知識にはウブな側面もある。

上杉桜(うえすぎ・さくら)

陽気で快活、茶目っ気がある美卯の親友の少女。面白そうなことにすぐに首を突っ込む。

高瀬瑠々菜(たかせ・るるな)

圭一のクラスの委員長。
美人過ぎるせいか近寄りがたい雰囲気を持つ少女。

清玲寺亜希(せいれいじ・あき)

女子テニス部主将。学園理事長の孫娘でもあり、ハイソなお嬢様として全校でも有名人。

幸村圭一(ゆきむら・けいいち)

年頃のスケベ心を隠しながら、学園生活を送るごく普通の男子学生。
素直でお人好しだが、恋愛の積極性には欠ける。

伊達意次(だて・おきつぐ)

圭一のクラスメートにして悪友。
自他ともに認めるスケベ大魔神。

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