第三十話 ハードボイルドな世界に於いても、それは輝ける青春もの。
文字数 2,071文字
『運命を象徴するような赤い糸。今となっては、もう
……紛れもなく現実の大地に立っている。話も続いている。
「
と、音羽は笑顔で親指を立てる。
ならば俺も、自然な笑顔で、
「サンキュー」
と音羽さんに、感謝の思いで応えていることだろう?
ドリブル。
食堂を後にしてドリブル。
そして五人目と六人目がグランド横断の、そこから近い校舎の入口に向かって走っている処を目掛けて、俺はシュートをするような体制からボールを蹴り上げた。
――二三日前の下校中、小さなスーパーで立ち読みをした漫画を、参考にしたドライブシュート。ということで、やはりシュート。
だとすれば、
そのボールは凄まじい回転を維持したまま、球威が落ちることもなく、約百五十メートルの距離を魅惑な曲線を描きながら飛行して、五人目の後頭部を直撃した。
七人目、八人目、九人目、十人目と、
待ち構えている。だけれども、俺にも仲間がいる。
仮にも同じ依頼で動く、『
太陽の光を避け、
薄暗い場所へと歩む。背景がピンクのイメージが消えて、その代わりといっては何だけど、イメージの音楽が変わった。締めの音楽。つまりエンディング曲が流れている。
……って、おい!
なかなか現れないから、
と、その前に、この校舎についてだが、
比較的新しい建物だ。聞いた話だが、この学園が中高一貫となったことを機に、校舎が三棟増築されたそうだ。で、あるからして、ちなみにここは中等部の校舎となる。
何が言いたいのかといえば、
「不自然だ」
と、言いたい。昼休みの
研ぎ澄まされた鏨は、
――効果音も一緒に相手を捉える。
それが六人目だ。
何と、中等部にも情報屋がいたのか? 風景までが驚きに包まれる瞬間だった。
類は類を呼ぶように、
七人目、八人目、九人目、十人目が現れる。すると、――コンマ何秒かの世界、すぐさま異変が起きたのだ。その正体は、シンプルに風。緑色で、スーッと通り抜けた。
……。
静寂の中、七十ミリの針が落ちる音。
同じ針が、これで四本廊下に転がる。
麻酔針だ。
倒れる。まるでテレビでも見ているかのような効果音。七人目、八人目、九人目、十人目が一斉に崩れるようにして、針と同様に転がる。いずれも眠っているのだ。
午後の光を背景に、基本色が緑の迷彩服。
二つに分かれる角柱型を上下逆に組み替えたもの……略して『シャーペン』と形状が酷似した武器を握っている。
沈黙は続いたが、
「お前、誰だ?」
と切り出した。期待の効果音をともにし、鏨を回転させた。
「おいおい、俺だよ」
と、慌てて長い黒髪を外した。ヘルメットのようにだから、
予想はしていたが、
決して百パーセントではなく、きっと一割も満たないだろう。なぜならば、思い込みは大敵だからだ。俺は
でもな、
「何だよ。脅かすなよ」
と、腰の力が抜けた。ヘナヘナという表現がお似合いだ。
「何だあ? その間抜けな面は」
と、風の名……改め迷彩服で白塗りの
それは廊下の端から端。隅から隅まで。
この校舎の中を貫く勢いでこだまする。
風の名とは異なる穏やかな風に運ばれ、「うるさい!」と、返ってきた。