ソボちゃん いちばん好きな人のこと 有吉玉青
文字数 2,775文字
読み終わった後に心がふっとなる、そんな作品集だったよね?
著者のその母が、有吉佐和子だったとは驚いたよ。
本作『ソボちゃん』は著者が母と祖母の思い出を綴ったエッセイなのだが、その作中に登場する『恍惚の人』は、実はぼくの家にある。とにかく立派なもので、辞書のような箱入りなんだ。
そんな感じで、『ソボちゃん』を読んでいるとどうしても自分の祖母のことを思い出さずにはいられない。
貫二(未来の二代目)の着飾りたい病が、とにかく笑える。
あそこが起承転結の「転」だったかねえ。
彼女の負けん気の強さがすがすがしい気がした。短い物語なので展開も引っ張らないし、気持ちよく読み切れる。
まあ実生活では案外、女ほどケロリと忘れ、男ほどネチネチ忘れないもののように感じることも、多いのだがな??(笑
「高校生になったらきっとあなたのモノにしてね」幼馴染の少女・白石楓は、そう約束して転校した。
彼女を忘れられなかった鉄雄は、念願が叶い高校で楓と再会する。しかし、彼女は鉄雄の兄のモノになってしまう。日々、隣の部屋から聞こえる兄と楓のやりとりを聞くことに耐え切れなくなった鉄雄は「ある秘密」を抱え、上京することを決意するが──!?
東京・下北沢を舞台に、様々な出会いを経て、成長していく姿を描く、心に刺さる上京青春物語!
心の痛手の度合いは人それぞれだから、難しいよね。鉄雄(主人公)の卑屈な気持ち、ぼくはわからなくもなかったよ。
そうそう。ただこの物語、インポが直ったあとの女性の扱いは、いただけないと思った。
それをひっくるめて鉄雄の抱える心の痛みや弱さ、を表現しているのだろうとは理解するけど、それでもあのシーンの鉄雄は大嫌いだ。
「流されているだけ」「逃げる」だけでは解決しない、そういうメッセージ性のある物語だった。