第4話
文字数 1,118文字
「お父様、チリルがお店に来るって聞いて喜んでたわ。イケメン社長に宣伝してもらおう、なんて調子のいいこと言っちゃって」
「僕でよければいくらでも宣伝するよ」
笑いながらチリルと絹子はシャンパンのグラスを近づけた。
良いお店があるの、といたずらっぽい笑顔で絹子に連れて来られた場所は、彼女の父親が新しく始めたカフェバーだった。
絞った照明が落ち着いた雰囲気を出していて、メニューに載っているお酒も本格的だ。
食べ物は軽いつまみくらいしかなかったが、上品で高価なチョコレートがシャンパンと良く合っていた。
おしゃれだが温かくゆったりとした空間。
彼女の父親の顔を思い出す。絹子のお父さんも、ちょうどこの店のように洒落ていて品があり、温かい人だった。
「絹子はさ」
「うん?」
「僕が宇宙人だって言ったらどうする?」
するりと口から出た言葉だった。
絹子の目が丸くなる。
「本当は宇宙人でさ、地球人の観察のために何百年も前から調査していて、対象者を捕獲して星に連れて帰るんだ。その先では拷問めいたことや人体実験的なことがあって……」
はっとし、グラスを持ち上げた手を止めた。
クソ。
本人に言うつもりなんてなかった。
絹子を不安がらせるつもりなんてなかった。
「な、なんてね、冗談冗談」
「……続けて」
絹子の真っ直ぐな視線が刺さる。
突き抜けるような眼差しだった。
「……星が決めた対象者に近づいて、捕獲して、星に連れ去って、また別の対象者に近づく。それが、本当の、僕の役割なんだ……」
じっと絹子を見つめる。
彼女は俯いて、ふるふると震え出した。
チリルは慌ててグラスを置き、彼女に近づく。
「ごめん。信じてもらえないかもしれないけれど、本当なんだ。でも、僕はこうして暮らす中で愛について気づいたんだ。一緒に逃げよう、君を守ってみせるから……」
「……逃げるですって?」
彼女はぱっと顔を上げた。
そこには満面の--笑顔があった。
「とんでもないわ!すぐに行きましょう。チリルってば本当言うのが遅いのね。いくらでも無理やり捕獲する瞬間なんてあったのに」
「は……?」
「この間だって、通信がきていたわよね?脅しみたいなやつが」
「なんで、絹子がそんなこと……」
上司からの通信。
あれは確かに自宅についてからの着信だったはずだ。
「チリル。ごめんなさい。私、本当はね……」
彼女は一拍おいて、また口を開いた。
「超能力者なの」
ぽかんとしたチリルに、絹子は微笑みかける。
ぷっとチリルは吹き出した。
「絹子は冗談が下手だなあ、超能力者なんているわけ……」
「あるわよ。宇宙人だって、目の前にいるわけだし」
楽しそうに絹子がシャンパンを飲む。
リップのラメがちらりと光っていた。
「僕でよければいくらでも宣伝するよ」
笑いながらチリルと絹子はシャンパンのグラスを近づけた。
良いお店があるの、といたずらっぽい笑顔で絹子に連れて来られた場所は、彼女の父親が新しく始めたカフェバーだった。
絞った照明が落ち着いた雰囲気を出していて、メニューに載っているお酒も本格的だ。
食べ物は軽いつまみくらいしかなかったが、上品で高価なチョコレートがシャンパンと良く合っていた。
おしゃれだが温かくゆったりとした空間。
彼女の父親の顔を思い出す。絹子のお父さんも、ちょうどこの店のように洒落ていて品があり、温かい人だった。
「絹子はさ」
「うん?」
「僕が宇宙人だって言ったらどうする?」
するりと口から出た言葉だった。
絹子の目が丸くなる。
「本当は宇宙人でさ、地球人の観察のために何百年も前から調査していて、対象者を捕獲して星に連れて帰るんだ。その先では拷問めいたことや人体実験的なことがあって……」
はっとし、グラスを持ち上げた手を止めた。
クソ。
本人に言うつもりなんてなかった。
絹子を不安がらせるつもりなんてなかった。
「な、なんてね、冗談冗談」
「……続けて」
絹子の真っ直ぐな視線が刺さる。
突き抜けるような眼差しだった。
「……星が決めた対象者に近づいて、捕獲して、星に連れ去って、また別の対象者に近づく。それが、本当の、僕の役割なんだ……」
じっと絹子を見つめる。
彼女は俯いて、ふるふると震え出した。
チリルは慌ててグラスを置き、彼女に近づく。
「ごめん。信じてもらえないかもしれないけれど、本当なんだ。でも、僕はこうして暮らす中で愛について気づいたんだ。一緒に逃げよう、君を守ってみせるから……」
「……逃げるですって?」
彼女はぱっと顔を上げた。
そこには満面の--笑顔があった。
「とんでもないわ!すぐに行きましょう。チリルってば本当言うのが遅いのね。いくらでも無理やり捕獲する瞬間なんてあったのに」
「は……?」
「この間だって、通信がきていたわよね?脅しみたいなやつが」
「なんで、絹子がそんなこと……」
上司からの通信。
あれは確かに自宅についてからの着信だったはずだ。
「チリル。ごめんなさい。私、本当はね……」
彼女は一拍おいて、また口を開いた。
「超能力者なの」
ぽかんとしたチリルに、絹子は微笑みかける。
ぷっとチリルは吹き出した。
「絹子は冗談が下手だなあ、超能力者なんているわけ……」
「あるわよ。宇宙人だって、目の前にいるわけだし」
楽しそうに絹子がシャンパンを飲む。
リップのラメがちらりと光っていた。