〜 はじめに 〜

文字数 570文字

――もう15年も昔のこと。2009年、当時の私は25歳、都内にて失業中だった。

北海道の片田舎にある寺の長男として生まれ育った私は、父の母校でもある関東のとある私大を出た後、同級生達よりもしばらく遅れて就職。
電機メーカー子会社で契約社員をしていたが、仕事内容や対人関係に病みきってしまい退職したてだった。

かといって寺を継ぐ覚悟も決まらず家業から逃げ回っていた頃――。
少年時代から実家を手伝ってはきたものの、坊主になるためには学科での試験や本山での修行が待ち受けている。その頃の私は簡単に得られるいわば仮免許を取って間もない段階で、仏教や宗教についての抵抗もありまだまだ腹を括れずにいた。

結果として都内で再就職をすることに。
なんせ無職なので言うまでもなく自由ではあった。
転職活動に使う時間以外は特にすることがなく暇を持て余していたから。

何社も書類を出しては不採用、月に2回程度あるかないかの面接も不採用。
少しずつ貯金が無くなり息詰まってくる、なんとも心細い気持ちで過ごしていた日々――。

一方でまた働き始めれば、今が底抜けに余暇を持てる恵まれたタイミングだったと気付くはず。そう分かり切っていたので、せっかくの機会をなるべく呑気に味わっておこうという気持ちもあった。

そんな無職時代にあったいくつかの素朴なエピソードを綴ってゆきたい。
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