もしもな番外編

文字数 523文字

 親友と名乗る基準(バロメーター)は、いかに時間を積み重ねたからではないとカチューシャは思っている。過ごした時間ならば、あの顔も中身もいけ好かない元隣家の幼馴染の方が圧倒的であるが、親切なあずきを変態へ売ろうとしたアバズレ(一家揃って夜逃げ済み)なので、つまり量より質だとカチューシャは判じた。

「キミは運がいい、ボクの親友に相応しいよ。ドン臭いところもあるがボクが手助けしてあげるからね」

 ツンデレの正道を踏み外し、選民主義をスパンコールのように輝かせた図々しい宣言に「あ、コレはダメだわ」と偶然場に居合わせたクラスメイトどころか、似た者同士も橘仁重(たちばなまさしげ)まで「そりゃねーよ」という顔をした。
 しかし、あずきは時おり心配になるほどのんびりしており、また温厚であった。きょとんと深い藍色の瞳を見開くと、幽艶な(かんばせ)がふにゃりと柔和に微笑んだ。この上機嫌の仔猫のような笑い顔がカチューシャは親しみやすくて好きだ。どこか昏い影が纏わりつく美貌だというのに、驚くほど人懐こい表情を浮かべる事は意外と多い。

「嬉しいわ。エカチェリーナちゃん、ありがとう。大好き」
「カチューシャと呼んでくれて構わないよ」

 こうして、桂あずきとカチューシャ・アオイ・ダーシュコヴァは親友になったのである。
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