第2話
文字数 3,167文字
ヨウコとレイカは目的のビルへ歩いて行って、僕はその後ろについて行った。
僕もたまにこのへんに来くるからそのビルのことは知ってた。人間が住まなくなった虫の脱け殻のような廃墟ビルだ。一階には侵入者を阻むようにステンレス製の網の目のフェンスで囲まれていて、玄関入り口は背の高いベニヤ板で封じてある。
一応フェンスに「立入禁止」という赤文字で書かれた看板が付けられてるけど、括りつけてる一方のワイヤーが落ちてしまって看板は斜めに風に揺れている。実はフェンスの方も金網が一部破れているところがあって、身をねじれば人ひとり入れるほどの隙間がある。
その先にある庇(ひさし)の奥の虚ろな玄関口は、一見ベニアに封じられているように見えるけど、すでに誰かによってこじ開けられてしまってるみたいだ。その上から破れたベニヤの覆い隠すために修理が一応されているみたいだけど、よく見ればそれすらガバガバで開くのも難しくない。
僕もひょっこり後に続く。
廃墟ビルの中は暗くて湿気がこもり空気が悪い。
テナントのためのメインスペースへと続く廊下にはゴミや大小様々な瓦礫が散らばっていて、足元に注意しながら先に進んでいった。壁には電気配線や水道管が露出していて、あちこち湿っているのは、どこか排水が雨漏りしているせいかもしれない。頭上の方から落ちてくる水滴のしたたる音が聞こえてくる。
二人は慎重に階段を登って言った。途中の階の各フロアも見てみるつもりだったが、フロアに入る廊下の入り口にバリケードがなんども再度貼り直したりして頑丈に塞いでいて入れないように隙間なく閉ざされていた。
最上階は他の階と違ってバリケードがなくて、フロアが大きく開け放されていた。部屋の奥の方の窓から、落ちる前の太陽がオレンジ色の光を差し込んでいた。
レイカはこの景色に魅せられたように見入って一方ヨウコは当惑しながら二人ともそのまましばらく窓のそとのその光景から目を離せずにいた。
そのとき僕は横からすごく嫌な視線を感じて、反射的にそっちの方へと首を回した。するとそこに驚くべき存在が立っていた。
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