第2話

文字数 428文字

た。
 

 
 小一時間程、近所をぶらつき、見慣れた景色が白く染まる様の新鮮さと、踏みしめる雪の感覚に飽きてきたので、僕は自宅へ帰る事にした。近所の人々が動き出し、厳かだった静寂も日常に上塗りされる。
 自宅へ向かう通りの最後の角を曲がると、そこには、
 ──地蔵が無かった。
 この角からでも十分目視出来る場所に置いたのだが、地蔵は消え失せていた。
 「んー、んー」
 唸りながら歩みを進める。設置場所の前に立ち、屈んで観察してみると、確かに窪みがある。
 「誰かが持って行ったのかしら──」
 首筋を掻きながら立ち上がり、目線を来た道と逆方向、つまり反対側に向けてみた。真っ直ぐに続く住宅街の狭い道路の先、右に折れるこれまた狭い路地の角に、地蔵が鎮座していた。
 よく見ると、雪に轍の様な、引きずった跡が残っていた。誰かが持ち去ろうと、運んだのだろうか。
 「あぁ──嫌だ、なんだか嫌だ」
 薄っすらと耳鳴りがしだし、頭痛の気配を感じながら、僕は逃げ込む様に自宅に飛び込んだ。
 
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