スプラッタ映画のDVD

文字数 890文字

 うちのレンタルショップには、常連さんがいる。その方は、いつもホラー映画のコーナーをうろうろ。きれいな方なのだが、趣味はあんまりよくない。
 なぜそんなことが言えるのか?
 ズバリ店員はレンタル履歴が見られるのです。
 人のレンタル履歴を見ている店員は気持ち悪いって? 理由はあるんだ。あのお客さんは毎日店に来る。さらにレンタル数が膨大すぎて、あまりの量に店長がびっくり。それで、店員全員で何を借りているのか見てみようということになった。そしたら、すべてがホラーとスプラッタのB級映画ばかり。たまにサメ映画もあったか。ともかくセンスが悪い。
 人気のあるDVDは華やかな恋愛ものとか、夢のあるヒューマンドラマとかだ。よっぽど現実生活に不満でもあるのだろうか。特に彼女が好きなのは、猟奇スプラッタ。あまりにもアレな趣味で、店員全員が彼女のレンタル履歴を見て固まった。

「あの……」

 彼女だ。普段レンタルDVDはセルフレジ。なんで俺がいるときに声をかけてきたんだろう。

「すみません、『キッチン・オブ・ザ・デッド』って入荷してませんか?」

 キッチン・オブ・ザ・デッド。新作ではないが、超一部のマニアに人気のB級どころじゃないZ級スプラッタ映画だ。

 ささっと端末で調べると、入荷なし。当然だ。一部の変態マニアにしか見られていないドマイナー映画だからな。

「申し訳ありません、当店では取り扱う予定ないですね」
「そうですか……ここのお店ホラーが充実しているのであると思ったんですが」
「すみません」

 『ホラー』と濁したが、実際は『スプラッタ』だ。彼女は長いまつげを伏せる。美しい。美しいのだが、中身は超サイコだということを忘れてはいけない。外見には騙されない。
残念そうに他のホラーを見繕って5本くらい借りて行った。あれを1日で見て翌日返却してくるから、なんというか本当に『人間としてヤバそう』である。

 ところでなぜ俺が『キッチン・オブ・ザ・デッド』がZ級スプラッタ映画ということを知っていたかって?

……まぁ俺もZ級スプラッタ大好きなんですけどね。ここの店のホラーコーナーを充実させているのは、俺の趣味です。
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