第1話 ほこりっぽい朝

文字数 1,221文字

 朝、起きて……
 ……空腹だった。

 特に何かが食べたいわけではない。
 ただ空腹だった。

 このまま寝ていても、誰かが何かしてくれるわけではない。
 だから起きた。

 のろのろと起きて、ベッドから出ると遮光カーテンを開ける。
 二階の窓までの高さがある庭木の向こうに朝日が見えた。

 遠くまで見渡せない。
 隣の家があるから。

 でも、今日もいい天気だった。
 窓を開けて風を入れる。

 生暖かい空気。
 思っていたよりも、きれいな感じがしなかった。

 のどの奥にイガイガが入ってくる感じがする。
 吸った空気がいがらっぽい。

 損した気分だ。

 窓を閉めてベッドを軽く整える。
 気を取り直して朝食にしよう。

 階段を下りて台所に行き、冷蔵庫を開けた。
 清々しいほどに食べたいと思う物が入っていなかった。

 とりあえず水分だけは摂る。
 2Lのペットボトルに入った水をそのまま飲んだ。

 体に水がしみ込む感じがした。
 水分も足りなかったようだ。もう少し水分補給をする。

 何か作ろうかとも思ったが、料理が好きなわけではない。
 フルーツが入ったシリアルに牛乳をかけて食べるのは飽きた。

 朝食というイメージで嫌いではない。
 でも、どんなに好きでも毎日はキツい。

 たまには違うものが食べたい。
 サンドイッチも悪くないが、温かいものがいい。

 ハンバーグステーキにシチューにグラタン。ピッツアにスパゲティ。麺類もいい。ラーメンにうどんにそば。

 チンするのではなく、できたての物が食べたい……。
 そういう食事を、もうずっと食べていない。

 コンビニに、新しい商品が入っているかもしれない。
 たまに、商品がグレードアップすることがあった。

 それを期待して、スマホと財布を持ち、習慣でドアに鍵をかける。
 本当にただの習慣。

 自宅の外に出て、何気なく空を見上げると、太陽がまぶしかった。
 定時に陽が上り、定時に陽が落ちる。

 毎日毎日、飽きもせず。
 埃っぽい朝。いがらっぽい空気。

 それを吸ったためなのか、喉がイガイガしていた。
 軽く咳が出た。

 水をもう一口、飲めばよかった。
 戻って飲もうかとも思ったけれど、また家に戻るのはおっくうだった。

 コンビニに行って、何か飲めばいいか……。
 そんなことを思っていたら腹が鳴った。そうとう空腹だった。

 家で食べればよかったかもしれないと軽く後悔。
 でも、そろそろ食糧の補充も必要だ。

 アスファルトのいつもの道を歩く。
 見慣れたはずの、いつもと同じはずの道。

 誰もいない道。
 風が吹いて、細かな埃が舞う。

 それが苦手だと思ったけれど、最短でコンビニへ向かう。
 広い道。でも、車は通らない。歩いている人もいない。

 朝なのに埃っぽくて
 朝なのに人がいない。

 そんな景色にも、慣れてしまった。
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