第3話 遠回りした散歩道

文字数 529文字

 満腹になったので、帰りは少し遠回りすることにした。
 橋を渡って川沿いの遊歩道を歩いた。

 街路樹がある土の道。
 春なら桜も咲いていたように思うけれど、今は緑の葉が茂る。

 昔はもっと広かったように思うけれど、道はだんだんと細くなっていったような気がする。川は味気のないコンクリートで固められ、アスファルトの道路が広くなり、人がひとり、歩くのがやっとの細い道。

 風が吹き、街路樹を揺らす。
 街路樹の向こうはアスファルトの道路が並行している。

 でも、やっぱり車は通っていなかった。
 茂った街路樹の向こうに道が見えても、誰も何も通らない。

 街路樹も誰かが植えて、誰かが手入れをしているのかもしれない。
 でも、その様子を観てはいない。

 木は勝手に成長して、雑草も生えてきて、そしてたまになくなっている。
 茂ってきたなと思うと、いつの間にかなくなっている。

 だから歩きにくくなることはない。
 外を歩くと道がある。誰が整備をしているのかはわからないけれど。

 サワサワと枝についた葉が音を立てる。
 サワサワ、サワサワ揺れている。

 生きている樹木。
 でも、話し相手になるわけではない。

 サワサワ、サワサワ揺れるだけ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み