クリスマス

文字数 672文字

幸せのドレスを身にまとったようなカップルたちの間を通り抜け、少しでもその幸せが私に
こぼれ落ちてこないかと期待するクリスマスイブ。家族やカップル、学生たちからはみ出した
自分がひどく惨めに見えるとわかっていながらも、この特別な日に、非日常感を求めて
都会を彷徨う権利くらいはあるだろうと思うから。
手を伸ばしたら届きそうな喫煙所が、彼方向こうにあるように感じる。

やっとたどり着くと、さっきまでの息苦しさが解消されていくのを感じながら、肺に栄養を
与える。それでもクリスマスマーケットなんていうイベントに来たのは、シフトすら
入っていないのに、家で独りネットサーフィンをしている方がよっぽど惨めだからだ。

ずらりと並ぶ出店には飲食物やクリスマスグッズなどが売られている。
スノードームの中で雪遊びをする少女に自分を重ね合わせ、悲しさを覚えた。
お腹が空いた。朝から何も食べていない。気づいた途端、目についた飲食店に並んだ。
クリスマスマーケットの本場、ドイツといえばのソーセージとビールを買い、口にする。
熱い肉汁が充満した口の中に、冷えたビールが流れ込み脳をバグらせる。
周りの人間達に負けじと幸福感を摂取した後、私は再度歩き始める。

ベツレヘムの星に導かれ中央に聳えるクリスマスツリーへと足を運んだ。
独りボーっと眺めているのも忍びなくなり、すぐに立ち去った。

少し歩き、人気の少なくなった路地でコーヒーを片手に夜に溶け込む。
背伸びした今日のぶんのツケが回ってきて、疲れを感じ頭の回転が遅くなる。
明日はバイトか、
私がそう絶望したのと同時にコスモロックの時計が0時を回った。
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