カフェオレ

文字数 610文字

誰もいない部屋で明日やその先のことを考えてるようで考えていない頭が酸素を求めて呼吸を繰り返す。
飲み物を買うために外に出る。

肌に布が当たるのが不快だからという理由で家では1年中長袖を着ない私は
誰にも会わないことを願いながら寒すぎて縮んでいるアスファルトの上を
感覚のない足で履きならしたクロックスで歩く。

もちろん目的地は家から最も近い自動販売機、着いたらポケットから財布を取り出し、
伸びた爪を気にしながら消費期限の過ぎた100円玉を取り出し、ゆっくりと投入口に入れる。
落とした小銭を拾うのに労力を使うほどの体力すら今の私にはないから。
「あったか~い」のエリアにある右から2番目のカフェオレを選ぶ。

朝に飲むブラックは好きだけど夜は絶対に甘いお菓子か飲み物を選ぶ君の習慣に
慣れてしまって、においや感触にとらわれてしまっているから
私だけが部屋の隅にたまっている埃みたいに取り残されている。

まだ飲むには熱すぎる缶の表面積を埋め尽くすように手のひらで覆う。
家に帰り暖房で体が温まりきる直前までは手から離さない。

家につくと部屋の電気を消し、間接照明へと移行する。
ゆっくりとカフェオレのプルタブを開け、冷めないうちに飲みたい欲求と時間をかけてゆっくりと飲みたい欲求の間で刹那の時を過ごす。

この夜が永遠と続いたらいいのにと思いながらも、左脳では「夜が明けたら明日が来る」
なんていうこの世界の摂理は理解していて、明日の不安で心が衰退していく。
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