第5話

文字数 354文字

春。∉だけが、JAXAに入社した。∉には、人間の女との間に子供がいた。学生時代の遊びがたたって、「できちゃった結婚」をしたのである。宇宙船は、JAXAの保管庫に眠っていた。警察から引き渡されたあと、分解され徹底的に調査され、再度組み立てられたのであった。

∉は、なつかしい宇宙船を両手で撫でた。女房子供をこの星に残し、明日にでもこれに乗って帰るつもりである。

だが、本当にそれでいいのか。「雪女」や「鶴の恩返し」はダンナと子供を残してヨメは帰っていくけれども、よく考えたらそれって無責任ではないだろうか。オレはちゃんとケジメをつけるぞ。

「老後は家族で京都に戻りたい(・・・・)しな。まあ、いいか」

∉の選択は正しかった。宇宙船は分解・組立による「接触不良・サビつき」で動かなくなっていたのである。
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