第1話 出会い
文字数 1,078文字
自分の髪の色も瞳の色も、たったそれだけが違うだけで排除してこようとする連中が。
それには父母も含まれていた。母は自分の存在を無視し、家の中で会えばぐしゃりと表情を歪めて金切り声を上げるのだ。「わたしじゃない、わたしのせいじゃない、この子が悪いのよ」と。父はそうなってしまった母の世話を甲斐甲斐しく行うくせに自分に対してかける言葉は「部屋から出てくるなと言っただろう、お前の存在自体があいつに悪影響なんだ」というものだった。
それでも愛されようと勉強も頑張ったし(同級生からは化け物のくせに生意気だと言われた)、運動も頑張った(これは化け物だから人とは違うんだと言われた)。料理を頑張ってみたが「きみがわるい」と言われ「余計なことをするな」と言われ続け心が折れてしまったのだ。
そうして最期自分からの嫌がらせに、これまでされた嫌がらせやいじめの内容をを書いた遺書をビルの屋上から飛び降りた筈だった。
それなのになぜ自分はこんなところに居るのだろうか。
後頭部の痛みが治まるまで待ち、そして治まった所で寝ころんだままの身体を起こし、周囲を見渡せば木が何本も生えいる。どうやらここは森の中らしい
。地面とこんにちはする筈だったのにどうして。まだ、この命は続くのか。
ガリ、と頭を両の手で掻き毟り嗚咽が漏れる。
いやだ、いやだ。もういやなんだ。
ぼろぼろと涙が流れ始め叫び出しそうになった瞬間に頭上から突然声が落ちてきた。
「大丈夫か?」
「え」
慌てて顔を上げるとそこには僕と年の変わらない少年が立っていた。
くすんだ紫色の髪色にオレンジの瞳、髪を染めている様にも見えないしカラーコンタクトを入れているようにもみえない。そんなことより異様だったのが、彼の着ている真っ白のシャツが血痕と言うにはおかしな紫色の液体で染まっていたのだ。
「こんな森の中に居たら妖精どもの餌食になるぞ」
「妖精? え……? ぼくのこと揶揄ってるの?」
まるでおとぎ話のような話をする彼を怪訝な表情で見つめれば、彼は「ああ」と頷く。
「お前、異界落ちか。そりゃ分からない訳だ」
「いかいおち?」
何が何だか分からない。ぽかんと口を開けてしまえば目の前の彼が手を差し出してくる。どういうことだろう。
「案内してやるから来い」
「僕のことが気持ち悪くないの」
「ああ? 何言ってんだ、さっさと掴め」
「……うん」
僕は差し出された弱々しく掴んだ。そうしたら彼が倍くらいの強い力で握り返し立ち上がるために引き上げてくれたのだ。
誰かが何の感情も抱かずに僕に触れてくれたのなんて生まれてこの方初めてだったかもしれない。