第1話 対話(一)

文字数 817文字

「地球さん、最近あなたのところから埃がよく飛んできますね」
「私の肌にいるはずの生き物がご迷惑をおかけしているようですね。火星さん、ごめんなさい」
「いやまあ、謝らなくてもいいんですよ、地球さん。あなたのせいじゃないんでしょうからね。でもちょっと、愚痴を言いたくなったんです。こっちこそ、ごめんなさい」
「いやいや、やっぱり私がしっかり管理しておればご迷惑はかからないはずですからね」
「それにしても地球さんも大変ですね。私はああいうのを残さなかったので。今となっては楽ですね」
「その点、私は少し後悔しています。前にも似たような感じで、私の肌を自在に動き回る連中がいたのですけど、あれは自分で処分しました。いや、宇宙からの石ころがきっかけでしたが、ちょっと痛痒かったですけど、そのあとは静かなものでした」
「まさかあのとき生き残った小さいやつらから、あんなのが生まれて来るなんて思わなかったんじゃないですか、地球さんは?」
「いつでも排除できるだろうと高を括っていた部分はありますね」
「それが今じゃあ……」
「火星さん、本当にごめんなさい」
「そういう意味じゃないですよ。地球さんに同情しているという方が正しいです」
「ありがとうございます」
「で、今は何か困っているのですか?」
「そうですね、最近はやっぱり表面全体にいつも何かが這っているようでかゆいんです。それと肌に穴ぼこがいっぱいできています。まあ、小さいですから、全然大したことじゃないんですが」
「大変ですよね、やっぱり」
「あと、最近は表面の温度が上がりましたね。まあ、私にとってはちょっとの違いでどうってことはないですし、そろそろそういう時期かな、とも思いますが、ちょっと連中の好きにさせ過ぎたのかな、って思うことはあります」
「そうなんでしょうね。ところで地球さん、何かこっちに来ますよ。」
「え、ああ。また小さいのが来ましたね。あれ? どうやら私の方ですか?」
「地球さんもいろいろありますねえ」
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