エピソードZERO ~ま、おおまかな紹介す~

文字数 2,276文字

【アーティスト名】
マ・ナントカナルス
(Ma Nantokanales)

【メンバー】
鈴木源三郎(すずきげんざぶろう)(16):高校一年生。リズムギター(たまにキーボード)担当。
 細身で色白で眼鏡という、典型的な「進学校に通う比較的マジメな男子」。音楽に対しては、「比較的」アツい。
 大衆的なポップスが好き。デスメタルやパンクはあまり好きではない。しかしハードロック、ツェッペリンは聴ける。プログレはイエスを好む。ピンク・フロイドについては、「意味が分からない」とのこと。キング・クリムゾンについては「聴いてると怖くなる」とのこと。アバやアラベスクなどのディスコ・ミュージックが好きで、どのジャンルよりハマりそうになる自分を、「俺はそんなキャラじゃないはずだ」と認められないでいる。
「比較的、×××」と、「ま、×××す」が口癖。バンド名「マ・ナントカナルス」は、不意に出た鈴木のひと言による。

墨田明美(すみだあけみ)(35):OL。リードギター担当。
 ケバい。上手く見せればクールな美人になるはずなのだが、どうしてもダサくなりがち。男運が悪い。10代の頃からバンドを組みたいと思っていたが、ずっと組めずにいた。ようやく組めて嬉しかったが、抱いていたイメージとのギャップに苦しむ。強がっているが寂しがり屋。
 ハードロック、メタルが大好き。「カッケえかそれ以外か」とのこと。AC/DC、メタリカ、プリンスを好む。ボンヤリしたとき、ふと「hideマジリスペクト……」と(つぶや)いてしまう。どんな曲もメタルチックにしてしまうところは、メンバーからよく注意を受ける。
 美術系の専門学校を卒業した経歴を買われ、バンドのロゴ作成を任される(書影画像参照)。

佐藤利夫(さとうとしお)(8):小学二年生。ドラム担当。
 小さい頃から(今も小さいが)何かを叩いていた。食事中は箸で食器を叩いて喜んでいた。砂糖と塩の入った(びん)を、ひたすら叩き比べることも多かった。両親がいくら叱ってもやめない。公園でも、友達と遊んでいるあいだ、スキを見ては何かを棒で叩いているほどだった。「こんなに叩いてばかりなんて、もしかしたらこの子は素晴らしいドラマーになるかもしれない!」と両親が思い、4歳にしてドラム(子ども用)を与えられた。そして1週間もしないうちに、エイトビートを叩けるようになった。
 それから4年経った。利夫はずっとエイトビート(のみ)を叩いていた……。両親は「親バカとはこのことだったか」と、身をもって知った。だが、利夫の目はキラキラと輝いており、普段から素直で明るく、実直でひたむきだった――そう、彼のエイトビートのように。彼のドラミングを見るたび、「ドラムをやらせていればいい子でいるから、それでいい」と両親も悟りすました表情になるのだった。

中野友子(なかのともこ)(55):主婦、パート。ベース担当。
 やや太っている。ポール・マッカートニーのようなつぶらな目と、タル・ウィルケンフェルドのようなヴォリューミーな髪を持つが、髪の長さは肩にも届かないショートである。つまり、普通のオバサンのパーマである。常にエプロンをしている。「家事が忙しいからイチイチ外してられない」とのこと。「小言は多いけど、いると安心感がある」とは墨田の弁。同居している家族は、夫と社会人の息子、大学生の娘である。
 10代の頃からロックが好きで、高校で軽音学部に入ってベースを担当していた。「その頃はブイブイ言わせていた」とのこと。それ以来バンドをやる機会はなかったが、2013年のポール・マッカートニーの来日や、タル・ウィルケンフェルドの台頭により、バンド熱が徐々に高まっていた。現在の中野が理想とするベーシストは、メリッサ・オフ・ダ・マー。
 ベースを始めたきっかけは、ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』のベースが、実はブライアンではなく、とある女性だと知った衝撃と感動による。

※ヴォーカルは都度、誰かしらが担当。

同じ町に住むが関わりあうはずのない4人が、音楽と生きざまで意気投合して組んだロックバンド。極端にバラついた個性は、サウンドに奇跡的な化学反応を起こす! ――ときもあれば、かなりチグハグになるときもある!

【代表曲】
「おひさま、今日もぼくは元気だよ」
作詞:佐藤利夫
作曲:鈴木源三郎
スタジオ練習に入る前の待ち時間のあいだ、鈴木が佐藤をあやすために「お遊び」で作った。鈴木はその曲をやるつもりはなかったが、佐藤がどうしてもスタジオでやりたいと言う。仕方なしに合わせてみたところ、女性陣がノッてきて、初めは童謡のような曲だったが、ヘヴィー・メタルにアレンジされた。
ヴォーカルは、作詞した佐藤が「これは激しいから、ドラムやりながらは歌えないよ」と言って辞退。歌詞が歌詞のため他の3人は全員が嫌がってたらい回しにされたが、最終的に鈴木が担当することになった。

「ただ愛されたかった」
作詞:墨田明美
作曲:鈴木源三郎
エモいバラード。鈴木の作ったメロディーに感化された墨田が、これまで鬱積してきた想いを泣きながらつづった歌詞。
ヴォーカルは、作詞した墨田が「自分で歌うのはちょっと照れるし、歌いだしたら感情が乗りすぎちまう」と言って辞退。歌詞が歌詞のため他の3人は全員が嫌がってたらい回しにされたが、最終的に鈴木が担当することになった。

その他、名曲多数。

バンドの物語については、第1章から……
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