第4話  ばあちゃんからの手紙

文字数 1,076文字

拝啓 雨宮詩音 様

この手紙が詩音に読まれている時。

きっと、私は荼毘に付されていることでしょう。

先立つ不幸を許してくださいね。
今から少し長い大切な、お話をします。

これから詩音が、大人になって大切な人を見つけ、愛する事を学び、甘える強さを得られる事を心から願って折ります。

人は必ずしも一人きりで生きていけるものではありません。

弱い部分を支え、補いあって共に学ぶ事を忘れず、愛し慈しみ生きていくものです。

そして人は皆、自分だけの色を持って生まれて来ます。

その色の糸を
紡いで
紡いで
大切な緣を築き、育てていくのです。

おじいちゃんや詩音、貴方のお父さんやお母さんと出逢えた、この世界は、とても素晴らしく美しいモノだと思えるの。

だからね‥詩音

忘れないで。

この世界が

命が尊いことを。

貴方の生きている

この素晴らしい世界が

夢を思い描く若者達を待ちわび

羽ばたく勇気を与えてくれることを。

どんなに惨めであろうとも
どんなに情けない姿であろうとも
諦めてしまっては何も始まらない。

生きていく事は時に大変かも知れない

それでも人は生きて行かなければならない。

残された人の分まで。

人生を謳歌する為に。

愛するモノの為に。

守るべき家族の為に。

貴方の心は、とても綺麗で、繊細で人より少し傷つきやすく、壊れやすい。

それでいて人の痛みに敏感で、とても優しい男の子です。

臆病で傷つく姿も

誰かを、傷付けてしまうのではないか?と怯える姿も

感情を殺して、内側の殻に綴じ込もってしまう弱き姿も。

全てが詩音
貴方、自身なのですよ。

弱い自分を受け入れて、前を向いて背筋を伸ばし、お日様に心を照らされてほしい。

私は貴方の傍を離れます。

もう、貴方を腕に抱くことも声を聞くことも叶いません。

けれど貴方を愛した事だけは、私の大切な欠がえのない一生の宝物です。

どうか忘れないで。

貴方は望まれて生まれ

皆に愛され大切に大切に育てられてきたのですよ。

どんなに、遠く離れていようとも

家族の緣は切れません。

永遠です。

なので一足お先に、黄泉の国で貴方が人生を謳歌し終える

その時まで。

貴方を愛した両親と共に。

貴方の帰りを待っております。



追伸

小さな命を大切に。
守るべき家族が出来て良かったね。
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