第2話  命名アンバー

文字数 1,061文字

僕の名前は雨宮詩音。

都内、某大学に通う学生だ。

詩音なんて女の子みたいな名前だねって言われるけど、僕は何気に、この名前を気に入っている。

名付け親は祖父母である。

詩を奏でる音のように、スーッと心に響き綺麗だなぁと子供ながらに感じた。

素敵な名前を与えてくれた事。とても感謝している。

大好きだった祖父母の付けてくれた名前に深い愛情を感じ、両親のいない僕を大切に育ててくれた、この人達に、恥じない生き方をしようと子供ながらに強く誓った。

僕の両親は、僕が産まれた数日後
交通事故で亡くなった。

その時、僕も母に抱かれ車に乗っていた、らしいのだが、父と母が命懸けで僕を守り、そのおかげで僕は助かった。

だから、僕は、生きたかったであろう父と母の分まで命尽きる、その時まで、命を大切に生きていかなければならない使命がある。

祖父母は僕の親代わりとなり
大切に愛情深く僕を育ててくれた。

「詩音には亡くなったお父さん、お母さんの分まで幸せになる権利があるのよ」

それが祖母の口癖だった。

そんな、ある日

祖母と喧嘩した。

「どーしてお父さん達は僕も一緒に連れていってくれなかったんだ!僕も父さんと母さんのいる世界に行きたいよ!」

両親がいない僕に、友達からの心無い言葉。こんなこと言ったって、祖母を困らせるだけだって分かってた‥なのに、僕は‥。

祖母は、そんな僕を涙ながらに抱き締め。ごめんなさいと何度も、何度も、謝りながら。

「ごめんなさい‥それでも、おばあちゃんもおじいちゃんも詩音には生きててほしい。そして分かってほしい‥‥っ‥」

祖母の瞳に溢れる涙。

心が軋む。

「‥‥どんなに貴方を愛していたか‥。
貴方の将来を楽しみに思い‥。どれほど貴方の傍に居たかったか‥だから、お願いっ‥二度と、そんな悲しい事は言わないでっ」

祖母を‥。

泣かせてしまった。

その日を境に僕は、二度と祖母を泣かせまいと強く強く胸に刻んだ。


名前を与える。付けるって行為は、とても大切で重要なことだ。僕は君に付ける名前を、ほんとにほんとに真剣に、悩んで考えたんだよ。


でも結局、君に付けた名前は、君と出逢った日。

君と初めて、瞳と瞳が交差した日。

美しい琥珀色の瞳から名前を貰った。


【アンバー】


透き通ったハチミツ色の植物の雫。

そう、日本では琥珀と呼ばれ、古来より宝石と称される美しい石の名前だ。

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