第20話:パリ議定書以降、世界のめざすべき道2

文字数 1,767文字

 また、その通告が効力を有するまでに1年かかる規定になっているので、米国の脱退が可能となるのは、最速でも、2020年11月4日以降になる。パリ協定は歴史的に重要な画期的な枠組みであるといわれている。

 その理由は、次のポイントが挙げられる。パリ協定が画期的といわれる2つのポイント、1つ目、途上国を含む全ての主要排出国が対象である事。2つ目、パリ協定が歴史上、最も画期的である点は途上国を含む全ての参加国に排出削減の努力を求める枠組みであるということ。

 京都議定書では排出量削減の法的義務は先進国にのみ課せられていた。しかし京都議定書が採択された1997年から今日までの間に途上国は急速に経済発展を遂げ、それに伴い排出量も急増した。

 実際、2016年の温室効果ガス排出量シェアを国別で見ると中国が、23.2パーセントで1位、インドが、5.1パーセントでロシアと並び同率4位。日本の温室効果ガス排出量シェアは、2.7パーセントで8位。

 ちなみに2016年の温室効果ガス排出シェアを国別ワースト3を見ると中国が、23.2パーセントで1位、米国が13.6パーセントで、2位、EUが10パーセントで、3位。途上国に削減義務が、課せられていない事は、参加国の間に不公平感を募らせる要因となった。

 それが一因となり京都議定書は当時最大の排出国であった米国も批准せず議定書の実効性に疑問符がつくこととなった。そこでパリ協定では途上国を含む全ての参加国と地域に2020年以降の「温室効果ガス削減・抑制目標」を定めることを求めた。

 加えて長期的な「低排出発展戦略」を作成し、提出するよう努力すべきであることも規定されている。パリ協定が画期的な枠組みとされるもう1つの理由はボトムアップのアプローチを採用したこと。

 京都議定書は先進国のみにトップダウンで定められた排出削減目標が課せられるアプローチを採用した。このトップダウンのアプローチに対し公平性および実効性の観点から疑問が示された事を踏まえ、パリ協定では各国に自主的な取り組みを促すアプローチが模索され採用された。

 この手法は協定の合意に至るまでの国際交渉で日本が提唱してたもの。これにより各国の削減・抑制目標は、各国の国情を織り込み、自主的に策定することが認められている。

 パリ協定発効のカギは公平性と実効性。さまざまな国や地域の参加と削減努力への宣言を促す事に成功したパリ協定。その実現のために公平性と実効性を担保するような工夫が行われた。

 まず削減・抑制目標について達成義務を設けず努力目標とした。ただし進捗状況に関する情報を定期的に提供し専門家による評価を受けることが定められ、透明性を確保した。これは目標を誓約し取り組み状況などを評価することから「誓約と評価方式」とよばれた。

 各国の目標は5年ごとに更新し提出することが求められた。京都議定書でも定められていた途上国に対する先進国の資金支援については、引き続き義務とされたが、パリ協定では、それに加えて途上国にも自主的な資金提供を奨励する事とした。

 協定の長期目標の到達度合いについては、全体的な進捗を測るために2023年から5年ごとに実施状況を確認する事とされた。その結果をふまえ各国の次の削減・抑制目標などが検討された。

このパリ協定の枠組みを受け日本でも目標が定められ多くの政策が検討され始めた。日本では中期目標として2030年度の温室効果ガスの排出を2013年度の水準から26パーセント削減することが目標として定められた。

 目標が低いのではないかという声もあったが、各国が自主的に定めた目標は、基準年度や指標などがバラバラであるため比較には、注意が必要。下記は、主要排出国の年度を合わせて削減、抑制目標を比較したもの。

 しかし、日本の数値は、一見低いように見えて、かなり高い目標であることが分かる。主要排出国の年度を合わせて削減・抑制目標を比較すると2013年比で、日本がマイナス26パーセント、米国がマイナス18~21パーセント。

 EUがマイナス24パーセントであり、日本の目標が、高いことが分かる。日本は2013年と比べた場合の数値、米国は、2005年と比べた場合の数値、EUは、1990年と比べた場合の数値を削減目標としている、
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