第1話
文字数 389文字
私のお腹に赤ちゃんがいると分かった日、帰宅すると、家中が温かな空気に包まれていた。
「おかえり、恵子」
母が飛んできて、私に耳打ちした。
「聞いて。陽子が、おめでたなのよ」
私は居間に入った。
「おめでたですって? よかったね」
義兄が、ありがとうと言った。姉はこれ以上ないほど幸せそうな笑顔を私に向け、予定日は2月8日ですって、と、はにかんだ。
母が言った。
「お父さんが生きてたらねえ。…今晩は焼き肉よ。支度手伝って」
「ごめん、仕事、溜まってて…」
私は2階の自分の部屋に入ると鍵を掛け、ベッドに突っ伏して、ひとしきり泣いた。
予定日になっても生理が来ず、体のだるさが続いていた。昼休み、検査キットで妊娠が判明した旨を恋人に電話すると、おそろしく長い沈黙が続いた。たまらず私は口火を切った。
「大丈夫よ。産むつもりないから」
「…ごめん。費用は渡すよ」
「おかえり、恵子」
母が飛んできて、私に耳打ちした。
「聞いて。陽子が、おめでたなのよ」
私は居間に入った。
「おめでたですって? よかったね」
義兄が、ありがとうと言った。姉はこれ以上ないほど幸せそうな笑顔を私に向け、予定日は2月8日ですって、と、はにかんだ。
母が言った。
「お父さんが生きてたらねえ。…今晩は焼き肉よ。支度手伝って」
「ごめん、仕事、溜まってて…」
私は2階の自分の部屋に入ると鍵を掛け、ベッドに突っ伏して、ひとしきり泣いた。
予定日になっても生理が来ず、体のだるさが続いていた。昼休み、検査キットで妊娠が判明した旨を恋人に電話すると、おそろしく長い沈黙が続いた。たまらず私は口火を切った。
「大丈夫よ。産むつもりないから」
「…ごめん。費用は渡すよ」
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