第3話

文字数 532文字

昼間は鳩の群れに紛れて投げられるエサのおこぼれに与る様になっていた。
いや、むしろ、かれの蚤を目当てに鳩が集まって来た。
かれは自分が届かない首根っこの蚤をつつかせようと、ピーンと首を伸ばした。
鳩にとって、蚤をつつけるノロマな猫はかれくらいだったし、何よりあの甲高い嫌な声で鳴かない。
ぷるるる…
ぷるるる…
いくら鳴いても、鳩の鳴き声にかき消された。
しかし、鳩は荒っぽく、容赦なかった。
すぐにかれは傷だらけ、毛並みは悪くなり、いくら毛づくろいしてもダメだった。
蚤は居なくなり、痒みは痛みに。
僅かなおこぼれを目当てに鳩の群れに行く理由もなくなり、かれは昼間もむしろ鳩を避けた。
夜にかまってエサをくれる人間も、もう居なかった。
おかあさん
きょうだいたち
あの、メス猫
みんな、どうしてるんだろう。
男の子が、こっちに来る。
3人、何かをいたずらっぽく喋りながら。
きょうだいだろうか?
一緒に、おかあさんのごはんを食べるのだろうか?
ぷるるる…
声が、出ない。
ぷるるる…
ぷるるる…
力を振り絞る。
「わあ!」
気付いた!
ぷるるる…
ぷるるる…
ぷるるる…
「うわあ、ほんとに鳩みたい。来るな!」
力いっぱい、石を投げられた。
見事頭に命中。
くらくらと、出た先は道路。
走って来た車。
トン。
気付きもせず、走り去る。
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