結依 25歳

文字数 724文字

結依は都会の中を一人で歩いていた。
実家を出て、一人暮らしをしているが、こちらに来て一ヵ月。
両親の支援の元、生きてきたが、ようやく仕事が見つかったのだ。
結依はとあるビルの前で立ち止まり、メモを見てからビルの名前を確認する。
ここで間違いないようだ。
結依はビルの出入り口へ入って、その会社があるフロアまで、エレベーターで向かう事にした。
緊張と、どうにでもなれという気持ちが結依の心の中を渦巻いていた。
目的地まで到着し、静かな廊下を歩き、とある会社名の書かれたドアを開けた。
結依は、派遣会社に登録して、色々な現場へ向かい働くという仕事をする事になった。
その為、四日間の研修がこの場所で行われるのだ。
その研修に参加する為、ここまで来たのだ。



ドアを開けて、中に入った瞬間、結依は言葉を失った。
コミュニケーションが下手で、人見知りの結依は、ハキハキと答えたりが出来ないタイプだが、大人になって、人と喋れるように意識を変え、誰とも喋れない自分の殻を破ったつもりだったが、挨拶すら発する事が出来なくなるくらい、時が止まり、頭の中に言葉が浮かんで来なかった。
不思議な体験をしているようにさえ、思えてくるくらいだ。
一瞬、この人はなんだか気になる…と思ったが、初めて会った人である。
一目惚れとも違う感情が結依の心を包んでいる。
それが結依の運命の相手と出会った瞬間であり、結依の前世との因果関係のある人との出会いだった。



その後、結依は、この時に会った男と交際するのだが、初めて会った時、言葉を失い時が止まったように感じたのは、自分でも良く分からないまま、何かを受け取ったからだった。
結依が気付かずとも、魂は分かっていたのだ。
過去世で愛しかった男が再び目の前に現われる事を…。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み